Research Abstract |
本年度は,怒りコントロールに関する研究として,"共感性"に注目し,二つの研究を行った.一つは,共感性操作と暴力映像の研究であり,もう一つは,共感性トレーニングを用いた攻撃性の抑制の研究である. 共感性操作と暴力映像の研究に関しては,二つの共感性操作が,暴力映像視聴における感情や認知にどのような影響を及ぼすか,について実験的な検討を試みた.共感性操作としては,感情推測トレーニングと共感的教示を行った.感情推測トレーニングとして,まず「喜び」「悲しみ」の2種類の表情を提示し,その表情から推測される感情と状況を選択させた.次に,表情に対応した状況を1つ提示し,自分がその状況になったことを想定させ,喚起される感情とその後の行動を回答させた.最後に,どの程度共感できたかを6段階で評定させた.一方,共感的教示として,暴力映像視聴中にある登場人物の気持ちになって映像を視聴するように教示した.その結果,トレーニングと教示の二つの共感性操作を行った場合,その映像をより衝撃的なものと判断し,暴力映像を容認しないことが示された.一方,感情推測トレーニングを行わず,共感的な教示に従って映像を視聴した場合,その映像をより残酷なものと感じ,怒り感情を喚起していることが明らかとなった. また,共感性トレーニングを用いた攻撃性の抑制の研究においては,週1回1時間程度で,感情推測,視点取得.自己の感情的推測,行動の探索と選択などを含めたトレーニングを計3回行った.トレーニング実施前と実施後の攻撃性について検討したところ,攻撃性高群では,トレーニング後に共感性が高まり,攻撃性が減少することが明らかとなった.また,視点取得が高まるほど,短気や敵意といった攻撃行動を促進すると考えられる感情や認知が減少することが示された.一方,攻撃性低群においては,トレーニング後でも,言語的攻撃以外の攻撃性と共感性は,変化しないことが明らかとなった.
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