2003 Fiscal Year Annual Research Report
量子論的第一原理計算に基づくチトクロム酸化酵素の構造変化と酸化・還元機能解明
Project/Area Number |
03J00316
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
神谷 克政 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | チトクロム酸化酵素 / ポリグリシン / 第一原理電子状態計算 / 密度汎関数理論 / 自由電子的な状態 / 多体効果 / 原子構造変化 / 電子状態変化 |
Research Abstract |
タンパク質の機能性発現はその構造の変化により制御されていることが知られている。このような構造変化は、タンパク質の電子状態の変化を伴うことが考えられる。また機能発現には、構造変化と同時に電子の授受を伴う化学反応が関与している。従って、タンパク質の機能性発現機構を明らかにするためには、その電子状態を解明することが不可欠である。しかしながら、例えば最も単純なタンパク質であるポリグリシンや生命科学で重要なタンパク質の一つであるチトクロム酸化酵素に対し、それらの電子状態に関する第一原理に立脚した研究は少ない。そこで本研究では、密度汎関数理論に基づく第一原理電子状態計算の手法を用いて、ポリグリシンおよびチトクロム酸化酵素の電子状態を調べた。 各タンパク質の電子状態計算では以下のような構造モデルを用いた。ポリグリシンに対しては、グリシン単量体が無限につながった直鎖状の構道を仮定した。チトクロム酸化酵素に対しては、酸化型と還元型の二種の構造がそれぞれX線結晶解析により決定さていることから、機能への関与が示唆されている部分を切り出し、構造モデルとした。 電子状態計算の結果、ポリグリシンおよびチトクロム酸化酵素それぞれにおいて、原子列から離れた内包空間に大きな振幅を持つ自由電子的な(NFE)電子状態がフェルミ準位近傍に出現することが明らかになった。この状態の起源は、原子サイトからしみだした電荷間の交換・相関相互作用、すなわち多体効果によることを解明した。また、チトクロム酸化酵素において、酸化型と還元型の最低空状態の空間分布が異なることがわかった。この違いは二種の原子構造の相違に起因すると考えられる。
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