2004 Fiscal Year Annual Research Report
量子論的第一原理計算に基づくチトクロム酸化酵素の構造変化と酸化・還元機能解明
Project/Area Number |
03J00316
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
神谷 克政 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ペプチド結合 / 水素イオン移動 / チトクロム酸化酵素 / 密度汎関数理論 / 自由電子的な状態 |
Research Abstract |
ポストゲノム時代の課題の一つとして掲げられた立体構造に基づくタンパク質機能発現機構の解明には、実験・理論の相補的なアプローチが必須である。例えば、酵素反応の素過程の一つであるタンパク質内水素イオン移動に対し、これまでX線結晶解析等の実験的手法の結果から、その移動経路は水素結合から構成されると考えられてきた。一方、呼吸という基本的な生命現象の担い手の一つであるチトクロム酸化酵素の水素イオンポンプ機能において、移動経路上に共有結合の一つであるペプチド結合が含まれていることが示唆されている。水素イオン移動反応は時間的にも空間的にも局所的な現象であるため、その詳細な経路同定を実験的手法のみで遂行するのは困難である。そこで本研究では、原子・電子レベルの原子移動経路が同定可能な密度汎関数理論に基づく第一原理電子状態計算の手法を用い、ペプチド結合を介した水素イオン移動可能性を検討した。 まず、水素結合が存在しないタンパク質であるポリグリシンおよび水素結合を有するタンパク質であるチトクロム酸化酵素に対し、水素イオン移動反応時の(準)安定状態での電子構造を決定した。その結果、ポリグリシンおよびチトクロム酸化酵素それぞれにおいて、酸素原子の孤立電子軌道およびペプチド結合の反結合性軌道がフェルミ準位近傍の電子状態を構成することがわかった。また、原子列から離れた内包空間に大きな振幅を持つ自由電子的な(NFE)電子状態がフェルミ準位近傍に出現することが明らかになった。この状態の起源は、原子サイトからしみだした電荷間の交換・相関相互作用、すなわち多体効果によることを解明した。
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Research Products
(1 results)