2005 Fiscal Year Annual Research Report
量子論的第一原理計算に基づくチトクロム酸化酵素の構造変化と酸化・還元機能解明
Project/Area Number |
03J00316
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
神谷 克政 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ペプチド結合 / 水素イオン移動 / エノール形 / ケト形 / チトクロム酸化酵素 / 密度汎関数理論 |
Research Abstract |
ポストゲノム時代の課題の一つとして掲げられた立体構造に基づくタンパク質機能発現機構の解明には、実験・理論の相補的なアプローチが必須である。例えば、酵素反応の素過程の一つであるタンパク質内水素イオン移動に対し、これまでX線結晶解析等の実験的手法の結果から、その移動経路は水素結合から構成されると考えられてきた。一方、呼吸という基本的な生命現象の担い手の一つであるチトクロム酸化酵素の水素イオンポンプ機能において、移動経路上に共有結合の一つであるペプチド結合が含まれていることが示唆されている。水素イオン移動反応は時間的にも空間的にも局所的な現象であるため、その詳細な経路同定を実験的手法のみで遂行するのは困難である。そこで本研究では、原子・電子レベルの原子移動経路が同定可能な密度汎関数理論に基づく第一原理電子状態計算の手法を用い、ペプチド結合を介した水素イオン移動可能性を検討した。 ケト形ペプチドグループ([-CONH-])の構造異性体であるエノール形ペプチドグループ([-C(OH)N-])を含むポリグリシンに対し、密度汎関数理論に基づく第一原理計算を行った結果、エノール形はケト形より不安定であり、そのエノール形からケト形への互変異性化にはC-Nペプチド結合のシス-トランス異性化を伴うことが明らかになった。この反応における律速段階はペプチドグループ内のOからNへの水素移動であり、その遷移状態ではシス形ペプチドグループからなる4員環構造が実現することが明らかになった。この経路を解析した結果、シス-トランス異性化の機構はエノール形とケト形で本質的に異なることが明らかになった。
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Research Products
(1 results)