2005 Fiscal Year Annual Research Report
ラット皮質脊髄路の軸索側枝の形成を誘導する因子の同定
Project/Area Number |
03J00358
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岡田 拓也 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | GeneChip / 皮質脊髄路 / 軸索側枝 / 電気穿孔法 / ガストリン放出ペプチド / GRP受容体 / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
本研究では軸索側枝形成因子の同定を目的としており、GeneChipを用いたスクリーニングにおいて得られた複数の候補遺伝子の解析を進めている。本年度は、昨年度に引き続き、子宮内マウス胎仔脳に対する電気穿孔法を用いた過剰発現により、in vivoにおける候補遺伝子の機能解析を試みた。実験としては、(1)大脳皮質第5層の起始細胞へ候補因子に対する受容体あるいは受容体のドミナントネガティブフォームを強制発現させる実験、(2)大脳基底核と間脳に候補遺伝子を異所発現させる実験、(3)橋核に候補遺伝子の過剰発現させる実験を行った。その結果、コントロールと比べて、候補遺伝子の1つであるガストリン放出ペプチド(Gastrin-Releasing Peptide : GRP)を橋核に過剰発現させた場合に、橋核の最も吻側と尾側へ伸長する側枝が少数ではあるが増加する表現型が認められた。この微小な側枝数の増加が、各サンプル間のDiIによる標識の微妙な差を反映している可能性も否定できないが、この結果よりGRPが軸索側枝形成に関与している事が示唆された。 そこで、GRPノックアウトマウスを用いた解析を試みた。まず候補遺伝子であるGRPがラットと同様にマウスでも側枝が形成される領域で発現しているかどうかを調べたが、予想に反してGRPは橋核ではその発現がほとんど認められなかった。GRP受容体はラットと同様にマウスでも大脳皮質に発現が認められたので、GRP受容体ノックアウトマウスを入手し、皮質脊髄路の軸索側枝形成に異常があるかどうかを調べた。その結果、皮質脊髄路の全ての側枝形成領域において、ホモマウスでもコントロールマウスと同程度に軸索側枝が形成されていた。 以上の結果から、GRPが軸索側枝形成を誘導する因子として機能する可能性が否定される訳ではないが、種を超えて軸索側枝形成に必須なものではない事が示唆された。今後はラットを用いて、GRPを過剰発現させる実験やGRP、GRP受容体をノックダウンする実験を検討する必要がある。
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