2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J00407
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
久保田 彰 愛媛大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | ダイオキシン類 / カワウ / 影響評価 / 体内動態 / チトクロームP450 / 肝集積 / mRNA発現量解析 / in-vitro発現 |
Research Abstract |
本研究では、社会的・学術的に関心の高いダイオキシン類による野生鳥類の汚染実態と体内動態を解明するとともに、その影響を肝チトクロームP450(CYP)系に着目して検証した。まず水棲のカワウや陸棲のトビを指標生物とした調査を実施し、極めて高濃度のダイオキシン類がこれら鳥種に蓄積していることを明らかにした。またダイオキシン類各同族体の肝臓-胸筋間の分配は、生物種や成長段階、組織、蓄積レベルといった要因に依存して変動することを解明した。さらにカワウではダイオキシン類蓄積濃度(TEQ値)の上昇に伴う肝CYP1A様タンパク発現量の増加が認められ、現実の環境中ダイオキシン類汚染レベルでCYP発現レベルが変化していることを示唆した。このようなTEQ値の上昇に伴う肝CYP1A様タンパク発現量の増加は、多くのダイオキシン類同族体で認められたが、一部の低塩素化同族体ではそれらの間に有意な正の相関関係は得られず、誘導されたCYP1A様分子種によって選択的に代謝されていることが推察された。興味深いことに、特定のダイオキシン類同族体は、肝臓中のTEQ値依存的に肝臓/胸筋濃度比が増加する傾向、すなわち肝集積する傾向を示した。ダイオキシン類が蓄積濃度依存的に肝集積するメカニズムを明らかにするためにCYP1A様タンパク発現量と肝臓/胸筋濃度比の関係を解析したところ、多くの同族体について肝CYP1A様タンパク発現量の高い個体ほど、肝臓に集積しやすい傾向が有意に認められた。以上の結果は、野生鳥類が高濃度のダイオキシン類に曝露され、それによるCYPの誘導や誘導されたCYPによる特定のダイオキシン類同族体の肝集積が起きていることを示唆している。したがって、これら鳥種を対象としたCYP分子種別のmRNA発現量解析、およびそれらのin-vitro発現タンパクと各同族体の相互作用解析を行うことにより、肝集積の種差・同族体差を明らかにする研究が不可欠であると結論された。
|