2004 Fiscal Year Annual Research Report
数理生物学に現れるタイムラグをもつ方程式の定性的研究
Project/Area Number |
03J00472
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
齋藤 保久 静岡大学, 工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 数理生物学 / タイムラグ / パーマネンス / inverse trophic relation / 非自励系差分個体群モデル / パッチダイナミクス / 生物数学 / イッキ読み |
Research Abstract |
本研究の目的は、数理生物学に現れるタイムラグをもつ方程式の定性的性質を明らかにすることである。本年の研究実績の概要は以下のようにまとめられる。 1.一種類の生物種がn段階の発育構造をもつときの,その個体群動態モデルにおけるパーマネンスの研究を行った.このモデルは生物学的に妥当な条件の下でカオティックな解軌道を呈する。このような複雑な状況においても,系のパーマネンス(種の永続性)は保たれることを数学的に証明した(11の論文1). 2.魚食性プランクトン,マイワシ,マイワシの稚仔魚の相互関係(inverse trophic relation)をモデル化し,魚食性プランクトンの大発生とマイワシの激減との因果関係について,数学的に解析を進めた.実際,モデル方程式はタイムラグをもつ3次元微分方程式となる(ここでのタイムラグはマイワシの稚仔魚が大人のマイワシに成長するまでに要する時間を意味する).解析結果をまとめた論文はカナダとアメリカの学術専門誌に受理され、現在印刷中である.同内容は、2004年京都大学数理解析研究所講究録にも記載されている(11の論文2,4,6). 3.一般のタイムラグを有する非自励系差分個体群モデルのパーマネンス研究.右辺の関数の連続性を仮定せず,生物学的に自然な条件の下,かなり広いクラスの一般個体群差分方程式に対してパーマネンスが成り立つことを証明した.また,そのようなタイプの方程式においてタイムラグが系のパーマネンスに無影響であることを示した(11の論文3). 4.個体の拡散はいかにして生態環境に共存の効果をもたらすのか-これは個体群生物学の分野における重要な課題である.生物の拡散と環境の周期的変化を考慮に入れた微分個体群モデルを解析を行い,各パッチ間の生物の移動に時間を考慮した周期係数の微分方程式系に対し,食物の豊かなパッチと食物の乏しいパッチをもつ環境において生物種が永続する(パーマネンス)ための十分条件,および周期解の存在を証明した(11の論文4).また、より特殊な場合に対し、上記の条件を改善した(11の論文5). 5.8月30日-9月3日、平成16年度京都大学数理解析研究所短期研究員(共同)として「生物数学イッキ読み・研究交流」を実施。21人の参加者で学術書「Lecture Notes in Biomathematics"The Golden Age of Theoretical Ecology:1923-1940", Francesco M. Scudo, James R. Ziegler著」を読み、研究交流・討論を行った.
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