2003 Fiscal Year Annual Research Report
付加体浅部から深部に至る堆積物の変形と物性変化の相関
Project/Area Number |
03J00475
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
山本 由弦 静岡大学, 理学部・生物地球科学, 特別研究員(PD)
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Keywords | 付加体 / デコルマゾーン / AMS / 地震発生帯 / 三浦 / 房総 / 屋久島 / 種子島 |
Research Abstract |
本年度は全体の研究計画の中でも付加体浅部である三浦・房総半島と深部である屋久島・種子島地域の野外調査と調査によって得られたサンプルの分析を中心に研究を行った.その結果付加体浅部からは,剪断歪が集中して大剪断帯を形成するのに先立って体積歪の増加する特定のゾーンが見出された.このゾーンは肉眼ではゾーン外部と判別が不可能であるが,剪断方向に規制された粒子配列の変化やそれによる間隙径および間隙率の減少が認められる.つまりこのゾーンは剪断によって高密度化され,過圧密状態になっていたために,沈みこむ堆積物の物質的境界として働いていたと考えられる.プレート境界断層であるデコルマから派生したと考えられる剪断帯は,このゾーンの最下部から見出され,同様に剪断に規制された粒子配列や間隙率・間隙径のさらなる減少が認められた.以上のように付加体浅部における変形は,(1)変位に先立つ堆積物の物性変化が大剪断帯の発達する位置を規制する,(2)変形は粒子の破壊を伴わず,粒子の再配列および間隙径・間隙率の減少で歪を解消している,ことが明らかになった.次年度の研究では,この物性変化がどの程度透水係数や間隙水圧に影響を及ぼしたかを評価するために,3軸試験機を用いた実験を行う予定である. 深部付加体が露出する地域では,同様の測定や変形様式の把握を行ったほか,温度条件を決定するために従来の輝炭反射率を用いた温度構造解析や,磁性鉱物の続成を用いた解析の手法開発を試みた.こちらは現在も継続中であるが,変形に関連した物性変化は,浅部のそれに比べ非常に狭い範囲で起こっていることを示すデータが示されている.
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