2003 Fiscal Year Annual Research Report
角閃石を用いた高圧変成岩の温度・圧力・歪み速度履歴の定量的解析
Project/Area Number |
03J00476
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
岡本 敦 静岡大学, 理学部, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | 角閃石 / ギブス法 / 温度圧力条件 / Ar / Ar年代 / マイクロブーディン / 三波川変成帯 / ギリシャ シロス島 / 反応進行度 |
Research Abstract |
本年度の研究成果として、主に以下の3つが挙げられる。 1.角閃石組成を用いた岩石の温度圧力定量的解析についてその得られる温度圧力について検討を行った。熱力学的な解析を行う際に様々な誤差要因が存在する。それらの不確かさがランダムに分布すると仮定し、結果の温度圧力にどれほどの誤差を与えるかを評価し、どのようにすれば誤差を小さくできるかを検討した。その結果、温度圧力の推定(ギブス法)の計算の際に与える組成変数の種類によって温度圧力の誤差が変わることが明らかになった。温度圧力の推定に関しては雑誌'Contributions to Mineralogy and Petrology'に掲載された。また、誤差の推定に関しては日本地質学会にて成果を発表した。 2.角閃石の変形組織、成長組織と時間軸を対応させるため、岡山理科大学においてAr/Ar放射年代測定を行うための試料準備を行った。年代測定の方法はレーザーを用い、ポイントで年代を測定するものと単結晶を用いて段階加熱するものと2種類行う予定である。そのための準備のため、5試料について、岩石の厚片を作成し電子プローブ顕微鏡を用いて組織解析を行い、また全岩を粉砕したものから角閃石の単結晶粒子を取り出した。現在、両試料とも放射線を照射している段階にある。 3.2つの典型的な高圧変成岩の野外調査及び岩石試料採集を行った。1つは国内の代表的な変成帯である三波川変成帯(四国中央部)であり、もう一つはギリシャのシュロス島である。どちらの変成帯もともに本研究で着目している角閃石を多く含む玄武岩質変成岩を多く産する。また、角閃石にはマイクロブーディン組織、(歪みの推定が可能)と組成類帯構造(温度圧力履歴の推定が可能)が観察される。一方で、その変形、変成反応履歴には明瞭な違いが観察される。三波川変成帯の後退変成作用(温度圧力減少期の吸水反応)は同じ変成度においては、ほぼ似たような度合いで進行する。それに対して、シュロス島では、エクロジャイト、藍閃石片岩相、緑色片岩相が同一の露頭に存在することが明らかとなった。これは沈み込み帯深部における流体の移動がシュロス島においては非常に不均質であったことを意味する。また、三波川変成帯では脆性破壊した角閃石の間を後の角閃石が埋めており反応の進行と変形の進行は対応する(Goldschmidt conferenceにて発表)ことに対して、シュロス島では間を埋めているものは少なく変形と反応との関係が明瞭ではない。今後、両変成帯について変形量と反応量について、定量化し、比較している予定である。
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