2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J00508
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
保坂 稔 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 緑の党 / シュヴァーベン地方 / 敬虔主義 / エコ村 |
Research Abstract |
今年度は研究目的どおり、環境思想の経緯を独自に把握した。日本では1970年代の環境思想をめぐる転換に着目するあまりに、戦前と戦後の通底性に言及した研究はほとんどみられない。しかし、ドイツの緑の党の歴史的経緯を研究した結果、緑の党の創設者自身が、1920年代初頭のドイツ思想に影響を受けていることを明言していることを見出した。さらに緑の党について触れているU・リンゼは、この思想的中心をヴァーデン・ヴェルテンベルク州のシュヴァーベン地方、とりわけシュトゥットガルトであるという主張をしていることも見出した。これらの理論的な研究の成果を踏まえ、シュヴァーベン地方においてフィールド調査を独自に実施した。この地方の特殊性のひとつである「敬虔主義」が環境保護意識を高めることに貢献しているというリンゼの主張を踏まえ、シュヴァーベン地方のエコ村の人びとが、なぜエコ村の道を選択したかに関して、インタビューをした。対象は、エコ村(シュヴァービッシュ・ハル市の隣に位置するボルパーツハウゼン[wolpertshausen])の村長、事務員1人、そしてこの村が経営に関与しているバイオガスセンターの所長の他に、エコ豚の組合関係者5人(組合長、組合幹部、組合員2人、直営販売所1人)である。結果は、敬虔主義は環境保護意識を高めるというよりは、むしろ伝統的な考え方に固執するきっけとなって、むしろ環境保護意識を低めるのではないかという意見が多く聞かれた。リンゼの描くドイツの環境思想をそのまま受け入れると、むしろドイツの環境保護の現状を歪んで把握する可能性があるということが判明した。以上の研究の成果は、研究をまとめている段階であって、来年度に研究発表を本格的に展開するつもりである。
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