2004 Fiscal Year Annual Research Report
形の空間上のゲージ理論に基づくクラスターおよび生体超分子の構造転移機構の解明
Project/Area Number |
03J00509
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柳尾 朋洋 名古屋大学, 大学院・情報科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | クラスター / 集団運動 / 反応座標 / 非平衡 / 相転移 / エントロピー的力 / 曲率 / 微分幾何学 |
Research Abstract |
化学反応や生体高分子の構造転移運動は一般に非平衡・非定常過程であり、ポテンシャル曲面や自由エネルギー曲面の地形だけからは理解できない多様な動力学的特徴をもっている。本研究の今年度の目標は、分子運動におけるそのような動力学的特徴が、分子の内部空間(形空間)の微分幾何学的性質によってどのように生み出されているのかを理解し、高次元・多チャンネルの反応に適用可能な新たな速度論の基礎をつくることであった。 今年度はまず、複数の反応チャンネルをもつ原子クラスターの構造転移運動(異性化反応)を解析し、この系の反応速度および反応の分岐比が、形空間上の反応経路の曲率によって大きく支配されていることを明らかにした。一般に、反応経路の大きな曲率は、反応の際の障壁として作用する。同時に、このような経路の曲率の効果は、経路上の各点での運動エネルギー分布の偏りとして現れることも明らかになった。そこで、反応の際に反応経路方向に系が感じる障壁の効果を、運動エネルギーの偏りの情報から定量化する手段として、「有効断面積」および「エントロピー的力」の概念を定式化した。これらの概念は反応の際に系がもつ運動量空間の構造を特徴づけるものであり、ポテンシャル曲面の情報と相補的な情報を与えるものである。そこでさらに、上述のエントロピー的力とポテンシャル曲面から決まる力の両者を考慮した「有効ポテンシャル」によって反応過程を反応経路に沿って大域的に説明する方法を提案した。以上の手法により、通常のポテンシャルからは決定することが困難だった反応のボトルネックや動的安定化状態を特定することが可能になり、反応速度や分岐比を上手く説明できるようになった。以上の手法を様々な化学反応および生体高分子の構造転移運動へと応用することは来年度への課題である。
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Research Products
(3 results)