2005 Fiscal Year Annual Research Report
形の空間上のゲージ理論に基づくクラスターおよび生体超分子の構造転移機構の解明
Project/Area Number |
03J00509
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柳尾 朋洋 名古屋大学, 大学院・情報科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | クラスター / 回転半径 / 縮約 / 微分幾何学 / 超球座標 / 遠心力 / 高分子 / 異性化 |
Research Abstract |
クラスターやタンパク質などの大自由度分子系が、集団運動によって協同的に形を変える現象は、現代の生物化学物理における最も興味深い現象の一つである。ところが通常、これらの現象に関与する自由度の数は非常に大きいため、その機構解明は困難を極めている。本研究の目的は、多体系の変形運動を扱う微分幾何学の枠組みを基にして、大自由度分子の運動を低次元のダイナミクスに縮約し、集団運動の仕組みを効率的に理解することにある。 本年度の研究では、まず超球座標の手法を用いることによって、N原子分子がもつ(3N-6)個の内部変数を、重要な変数(集団変数)とそれ以外の変数(熱浴変数)とに系統的に分離する方法を提示した。ここで集団変数に相当する変数としては、各慣性主軸方向の分子の大きさを表す3つの「回転(慣性>半径」が様々な分子集団運動において普遍的に重要であることが明らかになった。一方、残りの(3N-9)個の「角度変数」は多くの場合、熱浴変数と見なし得ることが明らかになった。そこで次のステップとして、縮約理論を基に、集団変数である3つの回転半径に対する運動方程式を導いた。その結果、回転半径に作用する力として、ポテンシャル由来の力の他に、熱浴変数(角度変数)との結合に由来する「内部遠心力」が発生しており、分子を一方向に引き伸ばし他方向に押し潰す自発的効果が絶えず生じていることが明らかになった。この内部遠心力による自発的「潰れ」効果により、対称性の高い分子構造は、内部エネルギー(または温度)の上昇とともに安定性を失い、一方で対称性の低い分子構造が安定化される機構が明らかになった。 筆者は、以上の機構を、アルゴンクラスターおよびポリマーの構造異性化運動において確かめ、その普遍性を示すことに成功した。
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Research Products
(4 results)