2003 Fiscal Year Annual Research Report
システムの変遷からみた仮名文書記史の研究-改新と採用の条件-
Project/Area Number |
03J00520
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 良徳 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 異体仮名の用法 / 機能 / 美 / 社会的条件 / 位置の条件 / 仮名文書記史 / 平安時代末 / 書記システム |
Research Abstract |
「機能面からは説明のつかない異体仮名の用法について-平安時代末における書家の書記テクストを対象に-」(論文投稿中) 書記テクストは、純粋に事柄の記録を目的としたものから、純粋に美的表現を目的として書かれたものまで、そのあり方は多様である。しかし、現在までの異体仮名の用法についての考察は、主として機能的側面からしか行われていない。平安時代末の美的表現を目的とした書記テクストを対象に、書記テクストを取り巻く諸々の条件を整理していくことで、機能面からは説明のつかない異体仮名の用法の説明を目指した。 具体的には、平安時代末の著名な書家の二人、藤原伊行と藤原教長の自筆本である『葦手下絵本和漢朗詠集』と『二荒山神社本後撰和歌集』を考察の対象とし、書記の実践を探った。調査の結果、鎌倉時代以前における異体仮名の使い分けには、「異体文字遣」や「隣接回避」、「行頭」での「補助字体」の使用のように「機能的側面」が強く働いている用法と、「草仮名」による字種の変化や「漢字の後」、「行末」などの特別な位置での「補助字体」の使用のように、「美的側面」が強く働いている用法がある一方で、「連接回避」のように、双方の側面が絡み合いながら表れている用法があることが分かった。 結果としては、美的表現を目的とした書記テクストにおいても機能的用法が基盤となっていること、しかし一方で、当時は「美」に変化が求められていたので、機能的側面が強く表れなくてもよい書面での位置を利用して、異体仮名の使い分けがなされていることが明らかになった。機能面からの考察を基盤にしながらも、美的側面からの条件という視点を導入導入する意義についても考えた。
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