2004 Fiscal Year Annual Research Report
システムの変遷からみた仮名文書記史の研究-改新と採用の条件-
Project/Area Number |
03J00520
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 良徳 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 異体仮名の用法 / 機能 / 美 / 社会的条件 / 位置の条件 / 仮名文書記史 / 書記システム / 平安・鎌倉時代 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度投稿中の論文が学会誌に1本掲載されたのに加え、新たに1本の論文の掲載が決定した。 ○「機能面からは説明のつかない異体仮名の用法について-平安時代末における書家の書記テクストを対象に-」 現在までの異体仮名の用法についての考察は、主として機能的側面からしか行われていない。平安時代末の美的表現を目的とした書記テクストを対象に、書記テクストを取り巻く諸々の条件を整理していくことで、機能面からは説明のつかない異体仮名の用法の説明を目指した。結果として、美的表現を目的とした書記テクストにおいても機能的用法が基盤となっていること、しかし一方で、当時は「美」に変化が求められていたので、機能的側面が強く表れなくてもよい書面での位置を利用して、異体仮名の使い分けがなされていることが明らかになった。 ○「異体仮名の使い分けと位置-藤原定家による機能的用法獲得への道筋-」 平安時代末から鎌倉時代にかけての同時代人4人の自筆テクストを対象に、「美的テクスト」から「事柄テクスト」に至る書記テクストの異体仮名の用法について、異体仮名の使われる「位置」に注目することから考察した。調査の結果からは、機能面への配慮からすべてのテクストでは「行頭」に注意が向けられていること、藤原定家筆以外の3テクストではいずれも美的配慮から「行末」(特に上の句)に注意が向けられていること、また『朗詠集』・『後撰集』では「連接回避」についても美的配慮がなされていることが明らかになった。また、藤原定家が機能的に異体仮名を運用することができた理由は、「異体文字遣」の運用の厳密化とその他の異体仮名の用法との協調関係の構築という2点の条件をクリアーしたことにあったことも明らかになった。
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Research Products
(2 results)