2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J00534
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
内田 良 名古屋大学, 教育発達科学的研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 児童虐待 / 子ども虐待 / 社会福祉 / 臨床社会学 / スティグマ / 育児不安 / 当事者主義 / 教育社会学 |
Research Abstract |
本研究は,児童虐待に関わる人びと(被害者・加害者・援助者)が,児童虐待経験や児童虐待現象に対してどのような意識をもっているのか,という点から児童虐待の現実世界を描くことを目的とする。 この目的に即して,本年度は2つの研究課題を立てた。ひとつが,虐待を受けた者(被虐待者)が自分の経験をどのように定義づけしているのかについて,インタヴュー調査を実施し,まとめあげることである。得られたデータを分析した結果,被虐待者は,自身の家族を「異常」な家族と認識することでスティグマを感じることがわかった。相互作用場面において登場する「普通」の家族像が,被虐待者の経験の「異常さ」を浮き彫りにすることで被虐待者にスティグマを付与し,そのスティグマが精神的傷害を生成・助長・増幅していく。 もうひとつの課題が,虐待防止の援助者の実践活動に焦点を当てて,援助者は,虐待をどのような現象として位置づけた上で,援助活動をおこなっているのかについて,インタヴュー調査から明らかにすることである。調査の結果,援助者は広義の「虐待」の定義を支持している一方で,加害者(親)に接したときには,必ずしもその広義の定義のままに親に語りかけるわけではないことがわかった。現実には援助者は,「虐待」という言葉の残忍な響きに配慮して,広義の意味を留保しつつ,援助活動を進めている。 これらの研究成果をもとに,課程博士学位請求論文「『児童虐待』の経験に関する社会学的研究-当事者の援助に向けた基礎視角-」を提出し,本年度10月に名古屋大学において,博士(教育学)の学位を取得した。
|