2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J00549
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
仲山 茂 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 秦漢時代 / 地域性 / 出土資料 / 県と侯国 / 『漢書』地理志 |
Research Abstract |
本年度においては、まず、戦国秦漢時代の地域性に関するこれまでの研究史の整理を行い、従来の研究においては、秦の本拠地である現在の陝西省、また早くから開発の進んだ山西省や河南省についての研究はかなりの蓄積を持つものの、それ以外の地域に関しては研究の立ち後れが目立つこと、戦国から秦漢を通じたより長期的視点が欠如していることなどが確認された。こうした研究史の整理の過程で、近年出版された池田雄一氏の著書『中国古代の聚落と地方行政』(汲古書院、2002年)の書評を公表し、研究史上の意義、そこから導き出される今後の課題を指摘した。 ついで、秦漢時代の県の置廃状況・規模について文献・出土資料の双方から検討を行った。その過程で、これまで県同様に捉えられてきた侯国に、極めて小規模なものが多く、また、それらが短期間で廃止され、近隣の県に併合される可能性の高い不安定なものであること、すなわち侯国と県とを同一視することができないことが明らかとなった。このことは、これまでの研究が依拠してきた、侯国を県と同様に記載する『漢書』地理志の記載そのものが、前漢後期の政治状況を反映したものであり、そのままでは地域性を考察していく上での基礎資料たり得ないことを意味する。このため、さらに、こうした侯国を排除しながら地理志に記載される前漢後期の県の分布・規模を検討し、出土資料などから導き出される秦から漢初段階の県の分布・規模、また後漢時代のそれと比較した結果、特に現在の山東省周辺の県の分布密度が大幅に下がるとともに、一県の規模が大きくなること、また、全国的な県の分布が漢初段階から後漢まで大きな変動がないことなどが明確になった。これらの研究成果は、現在公表の準備を行っている段階である。
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Research Products
(1 results)