2003 Fiscal Year Annual Research Report
紀元前5世紀末から4世紀のアテーナイにおける民主政と市民参加に関する研究
Project/Area Number |
03J00550
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐藤 昇 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 古代ギリシア / アテーナイ / 民主政 / 政治史 / 社会史 |
Research Abstract |
本年度は、昨年来取り組んできていた、五世紀末、ペロポンネーソス戦後のアテーナイ市民たちの意識の有り様を探る試みとして研究対象としていたソークラテース裁判に関する調査をまとめ、「内戦後、アニュートス、ソークラテースを告発す」として発表するにいたった。本報告は、ソークラテース告発者にして戦後アテーナイの有力政治家であったアニュートスのプロソポグラフィを調査した上で、リューシアース、アンドキデースの弁論作品を中心に当時のアテーナイ市民達の意識の有り様を検討し、当時のアテーナイ社会におけるソークラテース告発行為の正当性について分析したものである。 同時に、今年度より研究に着手した四世紀末葉のアテーナイ市の政治、社会状況を分析するべく、弁論作品、および金石文の検討をすすめている。本年度は、とりわけカイローネイアーの戦い直後のアテーナイに焦点を絞り、この時期の国内情勢をデーモステネース、ヒュペレイデース、リュクールゴスなどの弁論作品から分析し、反僭主/民主政擁護法が如何なる国内情勢の中で成立を見たのか、如何なる法制上の意義を有したのか、戦後イデオロギーとの関わりは如何なるものであったのかについて調査した。この結果は昨年六月の歴史学研究会西洋古代史部会定例会において中間報告をした。夏期には、アテネ、アゴラ博物館に展示されている反僭主法を刻字した碑文の現物を調査、検討する機会を得た。この件に関して、学術雑誌に投稿すべく、現在論文として執筆中である。なお、この主題から派生し、四世紀後半のアレイオスパゴス評議会と民主政との関わりに関しても考察をすすめる予定である。 また、本研究全体を進行させるため、四世紀末葉のアテーナイに関わる諸文献史料、金石文史料の調査、整理もすすめており、平行して国内外で発表されている二次文献の収集、検討も行っている。
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Research Products
(1 results)