2004 Fiscal Year Annual Research Report
紀元前5世紀末から4世紀のアテーナイにおける民主政と市民参加に関する研究
Project/Area Number |
03J00550
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐藤 昇 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ギリシア / アテーナイ / 民主政 / ギリシア文化 / エーゲ海 / 法廷弁論 / 社会史 / 権力 |
Research Abstract |
本年度前半は、古典期アテーナイの置かれた文化的、歴史的文脈を見直す作業の一貫として、広く古代ギリシアに浸透していた体育文化、殊にオリュンピア競技祭に注目し、その実態と共に、これら競技に向けられた社会からの眼差し、同時代人による意味付けについて考察した。その研究成果の一部は『岩波新書古代オリンピック』第3章第1節「走る、闘う」として公刊されている。夏期に渡英し、現在取り組んでいる4世紀のアテーナイ民主政と市民参加に関する研究を主たるテーマとして、ロンドン大学の古代ギリシア史研究者と意見交換した。本年度後半は、とりわけ、4世紀のアテーナイの民会、法廷弁論を主たる史料として用い、贈収賄を巡る言説を検討、そこから、市民たちが如何なる権力像を描いていたのか、そうした権力像が醸成されるには如何なる構造が存在していたのか、以上の点について分析を進めている。その成果に関しては、次年度始めに、ロンドンで開かれる研究会に於いて口頭報告される予定であり、さらに検討を加えた後、論文として公刊される予定である。また、民主政下のアテーナイに於ける政策決定と世論、その他の諸要素との関係を検討する為に、ケーススタディとして、小アジア、ペルシアなどとの国際関係を巡るアテーナイの民会決議を刻んだ二つの碑文を検討し、当該の政策決定に、アテーナイの市民世論を含め、外憂内患、当事国それぞれの思惑などの諸要素について検討した。この成果については、既に研究会「古代史の会」に於いて口頭報告済みであり、さらに検討を加え、考察を深めたものを論文として執筆しており、近く公刊される予定である。給付された科学研究費補助金は、以上の諸テーマに関する、欧米各国で出版されている研究書、一次史料の入手、及びデータ整理等に要するパソコン周辺機器の購入に当てられた。
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