2005 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマ分光法による単一生物細胞の全元素分析と化学形態別分析
Project/Area Number |
03J00604
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松浦 博孝 熊本大学, 工学部, 助手
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Keywords | 拡張元素普存説 / メタロミクス / 全元素分析 / 化学形態別分析 / 卵細胞 / ICP-MS / 生物濃縮係数 |
Research Abstract |
本研究では、生物の最小構成単位である細胞の全元素分析及び化学形態別分析として、サケの卵であるイクラ卵細胞を対象に研究を行うことを目的としている。本年度は、卵細胞の全元素分析の一環として、未定量元素の分析を目的とし、周期表8,9,10族の白金族元素および周期表4,5族のNb, Ta, Hfについて、定量分析を行うことを試みた。 白金族元素は、溶液中でクロロ錯イオンとして安定に存在する。そこで、前処理として、マイクロ波酸分解後、王水を用いてクロロ錯イオン化し、イオン交換による濃縮を行い、ICP-MSによる定量を行った。Ptのみ定量値を得ることができ、その湿重量換算濃度は0.0043ng g^<-1>であった。一方、Nb, Ta, Hfは、溶液中では、フッ化物イオンとの錯体として安定に存在するため、ICP-MSにより定量を行うためには、フッ化水素酸を用いた前処理が必要となる。そこで、前処理として行うマイクロ波酸分解後の溶液を1Mのフッ化水素酸溶液に調製し、ICP-MSによる定量を行った。得られた定量値は、湿重量換算濃度で、Nbは1.77ng g^<-1>、Taは0.113ng g^<-1>、Hfは0.068ng g^<-1>であった。 今回得られた卵細胞中元素濃度を海水中の元素濃度で規格化し、生物濃縮係数を算出したところ、Ptは20、Nbは350、Taは20、Hfは45であった。p, Fe, Cu, Znなどの生体必須元素の生体濃縮係数(10^4〜10^6)には及ばないが、数十倍から数百倍濃縮されている意味について考察することは今後の課題である。 現在までに、安定同位体78元素のうち59元素についてイクラ卵細胞中の定量値を得ることができ、検出できた元素を含めて67元素の存在を確認できた。白金族元素やNb, Ta, Hfは、生体中に含まれる濃度が非常に微量であり、文献による報告例は極めて少ないのが現状である。卵細胞におけるこれらの元素の存在濃度は報告例がなく、本研究で初めて濃度レベルを明らかにしたことは、これらの元素の生体内挙動に関して今後研究を進めていくうえで、大変意義深いと考えている。
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Research Products
(2 results)