2004 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマ分光法による単一生物細胞の全元素分析と化学形態別分析
Project/Area Number |
03J00604
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松浦 博孝 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 拡張元素普存説 / メタロミクス / 全元素分析 / 化学形態別分析 / 卵細胞 / 金属酵素 / HPLC / ICP-MS / 2次元クロマトグラフィー |
Research Abstract |
本研究では、生物の最小構成単位である細胞の全元素分析及び化学形態別分析として、サケの卵であるイクラ卵細胞を対象に研究を行うことを目的とする。本年度は、化学形態別分析法の1つとして、2次元HPLC/ICP-MSによる卵細胞中多元素化学形態別分析法を開発した。2次元HPLCには、両性界面活性剤(CHAPS)被覆固定相HPLCとサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いた。1次元目のCHAPS被覆固定相HPLCでは高分子態と低分子態の迅速な同時分離が可能であり、低分子態や無機塩類と分離された高分子態成分のみをオンラインで2次元目のSECに導入させた。 CHAPS被覆固定相HPLCでは、高分子態成分は1本の大きなピークとして検出されるが、その分取される時間を変化させることにより、SEC分離において、共存化学種の大きなピークを排除し、より存在量の少ない化学種を検出できる。本研究では、分取時間を3種類に設定した。その結果、イクラ卵細胞中12元素について検出することができ、SECのみの場合と比較して、少なくともさらに2〜3種類の化学種を新たに確認できた。 また、本システムでは、CHAPS被覆固定相HPLCにおいて、無機塩類と分離され脱塩された高分子態成分がSECに導入される。そのため、試料の濃縮を行った際、塩の影響を受けることなく微量化学種を検出することが可能となる。この利点を利用し、イクラ卵細胞に微量に含まれる亜鉛酵素アルカリフォスファターゼ中の亜鉛を検出することに成功した。 さらに、2次元HPLC/ICP-MSの測定において、イクラ卵細胞中のHg及びSeが分子量約50kDaの化学種として検出された。生体内では、HgとSeが共存すると、双方の毒性が打ち消されていることが考えられており、ここで得られた結果は大変興味深いものである。今後は、有機質量分析計を併用し、イクラ卵細胞中タンパク質の同定を進めていく予定である。
|
Research Products
(2 results)