2004 Fiscal Year Annual Research Report
ラン藻(シアノバクテリア)の概日リズムに関わる多重フィードバック制御機構の解析
Project/Area Number |
03J00612
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 由香里 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 概日リズム / ラン藻 / 代謝系 / 遺伝子発現制御 / 転写調節因子 |
Research Abstract |
概日リズムは、光や温度といった環境の日周変動に積極的に適応しようとする、単細胞生物から高等動植物に見られる効率的な生命活動である。従来、概日リズムは、環境情報が入力系を介して概日振動発生系(概日時計)に伝わり、出力系を介して生理的リズムとして現れると考えられてきた。また、概日時計を司るのは時計遺伝子と呼ばれる遺伝子の転写レベルの自己調節により振動を発生させていると考えられている。しかし、概日リズムの安定な振動の維持、周期の温度補償性、光などの環境刺激に対する時計の応答など概日リズムの特性については未だにほとんどが未解明の部分である。一方で、代謝系と概日リズムとの相関についてもこれまで明らかにされてきていない。そこでこれまで機能未知であったラン藻のCbbR相同タンパク質の1つであるRbcRによる代謝系関連遺伝子の発現調節機構を解明することにした。CbbRは化学合成細菌や光合成細菌のルビスコ遺伝子の転写制御因子として機能しているが、ラン藻においては数種その相同タンパク質が見いだされているが機能未知な点が多い。ラン藻の炭酸濃縮機構の遺伝子の1つ、cmpABCDはCbbR相同タンパク質の1つであるCmpRによって炭素欠乏時に正に転写調節されることが明らかになっていたが、ルビスコの遺伝子rbcLSとカルボキシゾームの機能と構成を担うccmKLMNOはCmpRによる制御を受けないことが報告されていた。全ゲノム解析による結果から、ラン藻Synechococcus sp.strain PCC 7942には2種のCbbR相同タンパク質が確認されたので(CmpRとRbcR)、rbcR遺伝子の破壊を試みたが完全に破壊することは出来なかった。これは、rbcR遺伝子がラン藻の生育に必須の因子であることを強く示唆するものである。また、ラン藻内でRbcRを強制発現させるとrbcLSの転写レベルが上昇していたことから、RbcRがrbcLSオペロンの正の制御因子であると結論づけた。
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