2003 Fiscal Year Annual Research Report
塩ストレス下での細胞壁構造強化におけるプロリンとその輸送体の役割に関する研究
Project/Area Number |
03J00631
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上田 晃弘 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 塩ストレス / プロリントランスポーター / アラビドプシス / オオムギ / 形質転換 / プロリン |
Research Abstract |
本年度はオオムギブロリントランスポーター(HvProT)遺伝子を形質転換したアラビドプシスのストレス耐性の評価を行った。 過剰発現をさせた形質転換体の耐塩性の評価を行ったところ、明らかな耐塩性の向上が確認された。これはHvProTを過剰発現させたことによって体内のプロリンホメオスタシスがかく乱されたことにより、根におけるプロリン蓄積量が増加したことが原因であると推察された。つまり、根にプロリンをためているために、塩ストレス下で根からの塩分の吸収を抑制していると考えている。HvProTの過剰発現により、塩ストレス下での植物体内の塩分含量の低下が認められ、またそれに伴った光合成活性や生長量の減少が野生株よりも抑制されていた。以上の結果は2003年7月末にハワイで開催されたアメリカ植物生理学会において発表を行った(Ueda et al.,2003)。その後、研究をさらに詳細に行ったところ、非ストレス条件下では形質転換体の生長量の減少が確認された。これは根でプロリンが増加する分、葉でのプロリン含量が減少しており、これも同様にプロリンホメオスタシスがかく乱された結果であると考えている。この結果、栄養生長を行う間、生長の抑制が葉の総数やロゼット径の減少、生体重の減少などに現れており、この影響により生殖生長期では収量(種子重)の減少が観察された(これまでの結果をまとめた論文は投稿準備中)。 これまで、プロリンは環境ストレス耐性を向上させる重要なアミノ酸であると認識されてきた。しかしながら本研究では過剰量のプロリンは毒性を示すことと、非ストレス下でもプロリンのホメオスタシスをかく乱されると生長量が減少することから、ストレス耐性以外の機能も有しているという新しい知見を得ることができた。これらの新知見についてさらなる解答を得た後、引き続き当初の計画に従って研究を行う予定である。
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