2005 Fiscal Year Annual Research Report
塩ストレス下での細胞壁構造強化におけるプロリンとその輸送体の役割に関する研究
Project/Area Number |
03J00631
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上田 晃弘 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | プロリン / プロリントランスポーター / オオムギ / プロリンデヒドロゲナーゼ / 根冠 / 細胞壁 |
Research Abstract |
これまでにオオムギの塩誘導型プロリントランスポーター(HvProT)遺伝子を導入した形質転換アラビドプシスについて解析を行ってきた。35Sプロモーターを使った過剰発現株では葉でのプロリン含量の減少により生長量が減少することは前年度の報告で述べた通りであるが、その後の解析により以下のことが明らかになった。 葉のプロリン含量減少の原因を探ったところ、プロリン全解系であるプロリンデヒドロゲナーゼ(PDH)遺伝子の発現量と酵素活性が形質転換体で増加していることがわかった。PDHの発現はプロリン処理や、植物をストレスから解放すると増加する。アラビドプシス内在性ProTの発現量は葉肉細胞では少なく、35Sプロモーターの制御下でHvProTが葉で強く作用したために、過剰のプロリンが流入し、その結果、PDH活性が増加してプロリン量の減少が起きたと推察された。 オオムギではHvProTタンパク質は免疫染色法により根の最先端部位である根冠に多く存在していた。HvProTの根冠での発現とストレス耐性との関係を調べるため、根冠特異的プロモーターを使って形質転換アラビドプシスを作出した。WISH法により禄冠で強くHvProT遺伝子を発現させている個体を二つ選んで生長を調べたところ、根長が野生株と比較して20%増加しており、根端0-2mmの部位のプロリンの蓄積量は野生株と比較して2-3倍増加していた。しかしながら耐塩性の向上は観察されなかった。 オオムギを使った根端付近におけるプロリン蓄積パターンの解析では、塩ストレス下では先端よりもその上位(より成熟した部分)で遊離プロリンが多いことが明らかになった。これはHvProTの発現が最先端部位で強いことと一致しないが、不溶性画分のプロリンおよびハイドロキシプロリン量が先端部位ほど増加しており、遊離プロリンの細胞壁成分としての利用が示唆された。
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