2004 Fiscal Year Annual Research Report
メキシコの近代化における死生観の変容に関する社会学的研究
Project/Area Number |
03J00648
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐原 みどり 名古屋大学, 大学院・国際開発研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 死者の日 / 死の隠喩 / アイロニーとユーモア / マチスモ / ジェンダー / マイノリティ / 近代化 / 民衆信仰 |
Research Abstract |
平成16年度における研究実績の概要は以下の通りである。 1.メキシコにおける死の隠喩の活用を、歴史的・社会的パースペクティブより分析し、名古屋大学大学院国際開発研究科フォーラムにおいて発表した。これは、メキシコの国民的祝祭「死者の日」の過去100年間の祝祭模様の報道形態を数種類の新聞・雑誌より比較検討したもので、祝祭や死への市民の態度、死に見い出される社会的意味が、社会制度や宗教統治の変容、革命や近代化によってダイナミックに変化してきたことを示した。一般的なことわざや慣用句、文学作品や芸術作品の中で表される死も引き合いにだし多角的考察を行った。 2.19世紀後半から20世紀初頭に活躍した民衆版画家ホセ・グアダルーペ・ポサダの作品に見られる革命当時の都市労働者の死生観、混乱する社会における残虐性とモラルについて2004年11月20日に行われた日本ラテンアメリカ学会中部支部研究会において発表した。(「ポサダの描いたノタ・ロハ:都市労働者の求めた残虐性とモラル」)ポサダの手がけた新聞の中でもノタ・ロハと呼ばれる社会の災難・事件記事を取り上げ、その読者であったペラードと分類される都市労働者階級の日常的生活と想像力、罪の捉え方とモラルの意識、極限状態における人間心理などを読み取ることで、20世紀革命とその後のメキシコ文化の担い手となったペラードたちの死の文化を分析した。 3.死んだ子供の写真を残す19世紀末から20世紀初頭の風習で、「天使の葬儀」と呼ばれるカトリックの葬送儀礼についての考察を進めている。平成17年3月25日に行われる「国際宗教学宗教史会議第19回世界大会」において、"Human Body Exposed : Constructing Views on Remains of the Dead"をテーマにしたパネルに参加し発表する。先植民地時代のメシーカ族の風習であった子供の人身供犠のコスモロジーと比較考察することで、子供の身体に付与されるメタファー及び、無垢なる子供の死がいかなる形で社会に還元されているのかを考察する。
|
Research Products
(2 results)