2003 Fiscal Year Annual Research Report
メキシコの近代化における死生観の変容に関する社会学的研究
Project/Area Number |
03J00648
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐原 みどり 名古屋大学, 大学院・国際開発研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 死生学 / 死のユーモア / ジェンダー / マチスモ / マイノリティー / 精神分析 / 近代化 / 民衆信仰 |
Research Abstract |
平成15年度における研究実績の概要は以下の通りである。 1.2003年5月より8月までメキシコ(メキシコシティー)に滞在し、メキシコ・サナトロジー(死生学)研究所において、メキシコにおける死生学の実践状況を実地調査した。主に、メキシコシティーにおける都市特有の死のあり方、死の学び方、そしてメキシコ社会の変容と死に対する態度の相関について、参与観察と歴史社会資料の収集によって調査を進めた。また、サナトロジー研究所およびその他の教育機関が行うサナトロジーに関するシンポジウム等に参加し、さまざまな分野からのアプローチを比較考察した。 2.同上メキシコ滞在期間中、都市社会の死生観に加え、地方の民衆信仰とともにある死生観を考察するために、各地の寺院に保存されている奉納画(エクスボト)を調査した。また、実際に奉納画家や奉納者によるエクスボト制作活動を追っていくことで、メキシコ民衆の信仰世界および信仰の実践に近づくことができた。さらに、文献や実際に収集した過去のエクスボトより、民衆信仰の変遷過程をメキシコの歴史的、政治的、経済的変遷の中に位置づけて分析した。この調査は、平成16年5月に発行されるラテンアメリカ研究年報に掲載される。 3.2003年11月11日より2004年1月21日まで、メキシコに再度滞在し、「死を笑う」というメキシコ民衆文化を、歴史資料、文献、映画や文学作品、そして「死者の日」の祝祭の様子より探求した。この研究成果は、名古屋大学大学院国際開発研究科の紀要ククロスに掲載される(2004年5月発行予定)。メキシコ国立図書館に保存される新聞等の歴史資料を通して、19〜20世紀の独立や革命そして近代化を通して、いかにメキシコ民衆が「死」の思想を創造・展開させてきたのか、そしてその思想が近年どのように実践され応用されているのかを考察している。メキシコの死のユーモアは人々の歴史的体験や、マチスモなどのジェンダー問題、階級闘争などと深く結びついている。
|
Research Products
(2 results)