Research Abstract |
本年度は,子実体(以下,キノコ)から放出される胞子数を明らかにするために,アカマツ林において優占的に出現するモリノカレバタケ属を対象として調査を行った。まず,キノコから放出される総胞子数を明らかにするため,キノコ9本を採集し,実験室内に静置し,放出された胞子を採取した。その結果,一日に一本のキノコから放出される胞子数は,80万〜3000万個と推定された。カサの投影面積と胞子数との間には有意な正の相関関係があり,回帰式が得られた。次に,11本のキノコを対象として毎日,キノコのカサの投影面積を測定し,上記の回帰式から胞子数を推定した(間接法)。同時に,カサの直下にマイクロチューブ(以下,チューブ)を設置した。チューブは毎日交換し,実験室に持ち帰り,採集された胞子を光学顕微鏡下で計数した(直接法)。その結果,直接法では,キノコの出現後2日目には胞子が採集され,キノコ一本あたり一日あたりに放出された胞子数は,10万〜140万個と推定された。これに対し間接法では,170万〜4800万個と推定された。以上のことからモリノカレバタケ属のキノコから一日に放出される胞子数は,10万〜4800万個の間と推定された(日本林学会中部支部会にて公表)。 また,昆虫による菌食が起こる時期を明らかにするために,37本のモリノカレバタケ属のキノコを対象に,キノコにみられる昆虫と,カサの投影面積に対する昆虫の披食の程度を調べた。その結果,トビムシ,デオキノコムシ,ケシキスイなどが観察された。また,出現直後にはカサの面積の半分が,腐敗した段階においては半分以上が摂食されていた。そこで,キノコは出現直後から昆虫に摂食されていることが明らかとなった(山下・肘井 投稿準備中)。 その他,キノコの発生消長と存在期間についての論文を公表した(Yamashita&Hijii2004)。
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