2003 Fiscal Year Annual Research Report
カルパスタチンの発現制御によるカルパイン活性異常をもつマウスの作製とその解析
Project/Area Number |
03J00821
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高野 二郎 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カルパスタチン / カルシウム / プロテアーゼ / カルパイン / ノックアウトマウス / 神経細胞 / 細胞死 / グルタミン酸負荷 |
Research Abstract |
アルツハイマー病や虚血性の神経細胞死において、カルシウム活性化細胞内プロテアーゼ「カルパイン」の活性化が観察され、深い関与が示唆されている。そこで、カルパインの内在性阻害蛋白である「カルパスタチン」の遺伝子改変マウスを作成し、神経細胞死の実験モデルとして広く用いられているカイニン酸(グルタミン酸の誘導体)刺激時による神経細胞死の解析を行った。 ヒト・カルパスタチンを生後前脳過剰発現するマウスに、カイニン酸の海馬内直接投与を行った。野生型のマウスに対し、カルパスタチン過剰発現マウスでは、カルパインの基質として知られるMAP-2(軸索の構成蛋白)やスペクトリン(細胞膜の裏打ち蛋白)の分解が抑制された。しかし、カルパインと同様に細胞死の際に活性化されるカスパーゼの活性には、大きな変化が見られなかった。そこで、NeuNの免疫染色により核の凝集を指標として神経細胞死の解析を行った。その結果、カルパスタチン過剰発現マウスで顕著な神経細胞死の抑制が観察された。この際、アルツハイマー病患者に活性化タウのリン酸化酵素Cdk5の調節サブユニットの分解を抑制することで、アルツハイマー病の発症機序の一つであるタウのリン酸化が抑制されていることが明らかになった。これらの結果から、カルパインによる細胞骨格の変性を抑制することで、アルツハイマー病や虚血による神経細胞死を軽減することが、推測された(現在、投稿中)。 また、ES(胚性幹)細胞を用いた相同組換えによりカルパスタチンの発現が70%低下しているマウスを作成した。このマウスは、通常飼育の状態では野生型と大きな変化が見られなかった。現在は、このマウスにカイニン酸投与を行い、野生型との感受性の差の検討を行っている。
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