2004 Fiscal Year Annual Research Report
カルパスタチンの発現制御によるカルパイン活性異常をもつマウスの作製とその解析
Project/Area Number |
03J00821
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高野 二郎 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カルパスタチン / カルパイン / アポトーシス / カルシウム / ノックアウトマウス / 神経細胞死 / カイニン酸 / 海馬 |
Research Abstract |
個体レベルでのカルパイン-カルパスタチンの生理機能および病態における役割を解析するため、カルパスタチン発現低下マウスを作成した。ゲノム構造上、通常行われる転写および翻訳開始点、機能ドメインの欠損が困難であるため、ゲノム上の阻害ドメイン上流にNeo耐性遺伝子とともにポリアデニル化シグナルをエキソン6に挿入することで下流の転写を抑制する方法をとった。相同組換えしたES細胞からホモ変異マウスを作成し、カルパスタチンの発現抑制をノーザンおよびウェスタン・ブロット法により確認した。一部mRNAの発現が検出され、選択的スプライシングによるエキソン6のスキップが生じていることが判明した。しかし、カルパスタチン活性は検出限界以下であった。このマウスは健常であり、野生型と大きな違いがみられなかった。細胞内カルシウム濃度上昇を引き起こすグルタミン酸の誘導体であるカイニン酸を海馬内局所投与したところ、カルパインの活性化誘導が顕著であり、DNAの断片化および核の凝縮をともなうアポトーシス様の形態を示す細胞の割合が野生型と比較して有意に上昇した。一般的にアポトーシスはカルパインと同じく細胞内システイン・プロテアーゼであるカスパーゼ-3の関与が知られているが、実験に用いた3ヶ月齢オスではカスパーゼ-3の発現がほとんどないため、活性化が見られなかった。そこで他のアポトーシス誘導経路として知られ、ミトコンドリア由来の因子であるApoptosis-Inducing Factor (AIF)とEndonuclease G (EndoG)の核移行を免疫組織染色により調べると、カルパスタチンの発現に逆相関を示した。そして、カルパインの基質として知られAIFやEndoGを誘導する因子としてBcl-2 familyの一員であるBidの分解がカルパスタチンの発現に逆相関していることを示した。カルパスタチンの発現低下は発生や分化など通常の生理機能には影響しないものの、ストレス条件下ではカルシウム流入によって誘導される神経細胞死に対して防御的な働きを示すことが明らかになった。
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Research Products
(2 results)