2004 Fiscal Year Annual Research Report
植物体中の微量金属含有比を用いた樹木生育環境診断法の確立
Project/Area Number |
03J00824
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
富岡 利恵 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 樹木 / 微量金属含有比 / 環境診断 |
Research Abstract |
背景と目的 昨年度において、ヒノキ、コナラ、アベマキ、クヌギ、アラカシ、ヒサカキの葉内金属元素」含有量を調べた結果、各樹種に特有の元素比が存在することがわかった。そこで本年度は、対象樹種をコナラ、ヒサカキ、タカノツメの成木とし、葉内元素含有量の季節変化、土壌化学性や葉内の窒素形態との関係を詳細に調べた。また土壌酸性化をに伴って土壌溶液中に過剰に溶出するアルミニウムに着目し、植物材料として、ヒノキ、コナラの苗木を用いて、根圏のアルミニウムの存在が樹木に与える影響を長期的に調べた。その結果、18ヶ月の1.0mMのアルミニウム処理により、両樹種ともにアルミニウムにより成長が促進され、光合成活性、根の呼吸活性が増大することがわかった。そこで、アルミニウムによる成長促進メカニズムを解明することを目的に実生苗を用いて短期的な実験を行った。 結果と考察 成木の葉内元素の季節変化を調べた結果、ホウ素、鉄、マンガンの吸収に土壌の化学性が強く影響している事がわかった。銅や亜鉛は成長部位や冬芽に多く配分され、鉄やマンガンは老化器官に蓄積されることがわかった。また、タカノツメにおいて光合成速度と葉のホウ素濃度に高い正の相関が見られた。コナラ、ヒサカキ、タカノツメの葉内窒素形態(可溶性タンパク、水溶性タンパク、クロロフィル)と微量金属元素との関係を調べたが、各窒素形態と葉内微量金属元素濃度との間に明瞭な関係は見られなかった。今後は葉内での微量金属元素の存在形態を考慮した分析を行う必要がある。 アルミニウムによる成長促進はまず根で現れることが分かった。アルミニウム処理3日後には側根原基数の増加が見られ、1週間後には根内のNADレベルの増加が認められた。アルミニウム処理1週間後では光合成活性や根の呼吸活性の増加は認められなかったが、根や葉の硝酸還元酵素活性が増大がしていた。アルミニウム処理により、硝酸還元酵素などの代謝が活性化され、葉内でのタンパク質合成の増加や根での細胞分裂が盛んになることがわかった。
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Research Products
(2 results)