2003 Fiscal Year Annual Research Report
植物体中の微量金属含有比を用いた樹木生育環境診断法の確立
Project/Area Number |
03J00824
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
富岡 利恵 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 樹木 / 微量金属含有比 / 環境診断 |
Research Abstract |
背景と目的 これまでの研究結果より、光合成活性や成長に顕著な変化や可視障害等は見られなくともストレス負荷強度により植物体内微量金属含有比が変化することが分かった。微量金属は生物にとって有効濃度範囲が狭く、また生体内の代謝をはじめ、体内ホメオスタシスに働くタンパク質の中心金属であるものが多く、生理機能深く関わっている。また、体内を移動しにくいことから、体内の微量金属含有比の変化から樹木の健全性、生育環境を診断することができるのではないかと考えた。本研究では、ストレス負荷強度による樹木の根呼吸活性、光合成活性変化とこれらの機構にかかわる金属タンパク量変化、微量金属濃度の関係を詳細に把握し、樹木の生理状態と体内微量金属量との関係を明らかにし、樹木の健康、生育環境を診断するための微量金属含有比を指標とした樹木健康診断法を確立することを目的とした。 結果と考察 始めに基礎的なデータとして、日本の主要造林樹種であるヒノキ、2次林を構成する主な樹種であるコナラ、アベマキ、クヌギ、アラカシ、ヒサカキを対象に、各樹種の葉内微量元素含有量とその割合を愛知県内の3つの森林で調べた。その結果、各樹種特有の元素比が存在することがわかった。 土壌酸性化に伴って土壌溶液中に過剰に溶出するAlに着目し、植物材料としてヒノキ、コナラの苗木を用いて、根圏のAlの存在が樹木に与える影響を長期的に調べた。その結果、根先端1cm部分でのCuとFe濃度がAl処理でヒノキとコナラともに減少するが、いずれの元素も葉内の濃度の減少は見られず、またZn、Mn、Bの根先端1cm、葉内の濃度に処理による違いは明らかではなかった。 今後は体内の金属存在形態に着目し、金属濃度の関係を詳細に把握し、樹木の生理状態と体内微量金属量との関係を明らかにして行く。
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