2003 Fiscal Year Annual Research Report
酸化ストレスによる細胞内シグナル伝達の修飾と生物学的意義
Project/Area Number |
03J00851
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川本 善之 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | チロシンキナーゼ / RET / 酸化ストレス / 自己リン酸化 / 質量分析 / ラフト / 活性酸素種 |
Research Abstract |
酸化ストレスによりがん遺伝子産物が翻訳後の修飾を受けて活性化される機序については不明である。本研究では重金属や紫外線等の酸化的ストレス刺激によりがん遺伝子産物であるRET受容体型チロシンキナーゼが活性化する事実を受け、RETに着目してその機序について検討を行った。酸化ストレスによるチロシンキナーゼを介したシグナル伝達修飾を解明するにはまずRETの自己リン酸化部位を同定し、キナーゼ活性化機序を知ることが重要である。そこで、バキュロウィルスシステムを用いたRETタンパク質大量発現系を構築し、質量分析により自己リン酸化部位を検討した結果、チロシン(Y)806、Y809、Y900、Y905、Y981、Y1062、Y1090、Y1096が自己リン酸化部位であることを直接示すことができた。これらのチロシンのフェニルアラニン置換体を作成し検討したところ、Y806およびY809はいずれもキナーゼの活性とその下流シグナリングに部分的に寄与していること、そしてY900は主要自己リン酸化部位と考えられるY905に対して機能的に補う働きがあることを示すことができた(J Biol Chem,279,2004,Apr.掲載予定)。 一方、RETなど多くの受容体型チロシンキナーゼは、ラフトと呼ばれる脂質膜ミクロドメインと深く関わり、リガンド刺激時においてラフトは効率的なシグナリングのために重要であると考えられている。研究員はチオール反応性化合物(Arsenite)による活性酸素種(ROS)の生成がラフトと関わっており、ラフトを介して生成したROSがチロシンキナーゼの活性化に影響を与えている可能性を見出した。ROS産生に関与するラフト局在性分子の同定をLC/MS/MSシネテムを用いて検討した結果、現在複数の候補分子を同定した。今後、in vitro遺伝子ノックダウンの手法を用いてその確証を得る予定である。
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Research Products
(1 results)