2004 Fiscal Year Annual Research Report
酸化ストレスによる細胞内シグナル伝達の修飾と生物学的意義
Project/Area Number |
03J00851
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川本 善之 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 酸化ストレス / ラフト / ヒ素 / チロシンキナーゼ / Vav1 / Lck / small Gタンパク質 / アクチン |
Research Abstract |
酸化ストレスを引き起こす活性酸素種(Reactive Oxygen Species : ROS)は紫外線や重金属といった外因性要因のほか、細胞膜受容体のリガンドや抗体のような内因性要因によって惹起される。ROSは癌や神経変性疾患、糖尿病など重篤な疾患の一因として考えられている一方で、チロシンキナーゼの活性修飾やレドックスシグナリングに関わり、重要なシグナル伝達因子として機能していることが明らかとなりつつある。しかし、ROS産生の機序については未だ不明な点が多い。本研究では、SH基反応性ヒ素化合物(Arsenite : As)による細胞内ROS産生に、ラフトと呼ばれる細胞膜脂質ミクロドメインが関与する知見に基づき、ラフトを介したROS産生の機序を解明することを目的として検討を行った。その結果、1、アクチンはAsによるラフトの凝集を負に制御している。2、細胞内ROSはAsによるラフトの凝集の度合いに応じて産生される。3、As刺激によりVav1、Lck、Rac1、Cdc42がラフトへ局在する。4、Vav1のラフトへの局在量はROS産生量と正相関する。5、Lckを含むSrcファミリーチロシンキナーゼはROS産生に関与するがラフトでのリン酸化量とROS産生量は必ずしも相関しないことが示された。これらの結果から、Asにより産生される細胞内ROSはROS産生に関与するタンパク質がアクチン骨格依存性にラフトへ局在することが発端であることが示唆された。特に、Vav1はラフトを介したROS産生に対する主要な機能を担うタンパク質であり、チロシンキナーゼやsmall Gタンパク質と相互作用しながらROS産生に寄与していると示唆された。ラフトは様々な刺激に応じROS量を調節する機能を担い、それによって細胞増殖やアポトーシス、転写産物制御につながるシグナリングがもたらされると考えられた(論文投稿準備中)。
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Research Products
(2 results)