2003 Fiscal Year Annual Research Report
モデル下等生物を用いたタンパク質架橋酵素の未知生理機能の探索
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03J00941
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
和田 文孝 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 真正粘菌 / トランスグルタミナーゼ / 変形体 / CBP40 / 傷害修復 |
Research Abstract |
本研究では、下等モデル生物として粘菌、特に真正粘菌を用いて、トランスグルタミナーゼの機能解析を行っている。以下に本年度に行った研究によって得られた成果を示す。 1、真正粘菌トランスグルタミナーゼの発現誘導に関する研究 真正粘菌の多様な細胞形態(変形体、子実体、胞子)における真正粘菌トランスグルタミナーゼ(PpTGase)の発現様式をRT-PCRにより解析した。その結果、変形体で最も発現量が多く、子実体においては発現していなかった。また、PpTGaseを大腸菌で大量に発現させ、それを抗原として作製したモノクローナル抗体を用いてウェスタンブロッティング行い、タンパク質レベルの発現量を解析した。その結果、変形体で最も発現量が多く、子実体においては検出されなかった。以上のことからPpTGaseは変形体という細胞形態を維持するために必要なタンパク質であることが示唆された。 2、真正粘菌を用いた損傷修復におけるトランスグルタミナーゼの機能解析 PpTGaseは細胞が傷害を受けた際、カルシウム結合タンパク質CBP40を基質として細胞膜の修復に関わることが示唆されている。しかし、その現象における詳細な機能解析は行われていない。そこで、変形体にエタノール傷害、及び物理的傷害を与えCBP40の架橋様式を解析した。その結果、傷害を与えて数十秒という比較的速い時間でCBP40の架橋化が検出された。また傷害部位におけるPpTGaseとCBP40の二重免疫染色の結果、両者とも短時間で傷害部位に集積し、一部共局在した。以上のことからPpTGaseがCBP40を基質として細胞膜傷害の修復に比較的速い段階で関与することが示唆された。今後はPpTGaseのノックダウンや新規基質の同定を行い、PpTGaseが関わる細胞膜の修復機構を詳細に解析していく予定である。
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[Publications] 和田 文孝: "Identification of mammalian-type transglutaminase in Physarum polycephalum"European Journal of Biochemistry. 269. 3451-3460 (2002)
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[Publications] 人見 清隆: "トランスグルタミナーゼの分子進化と多様性"化学と生物. 41・12. 782-784 (2003)