2003 Fiscal Year Annual Research Report
アイザイア・バーリンと「品位ある社会」の観念-ニーズ論による自由主義の再検討-
Project/Area Number |
03J00977
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
森 達也 早稲田大学, 教育学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 品位ある社会 / アイザイア・バーリン / ニーズ / ナショナリズム / ロマン主義 / 帰属 / 自由主義 |
Research Abstract |
本研究の課題である「品位ある社会」概念の政治理論的考察に関して、今年度は以下の三点を中心として研究を遂行した。 1.品位ある社会の政策的指標をなすニーズ理論について、人文杜会諸科学における現在の研究状況を調査し、論点を整理した。この問題領域の議論レベルの多層性、および広範な学際的研究の必要性に鑑み、次年度も引き続き入念な文献調査・分析が必要との判断に至った。 2.新しい自由主義の諸理論を検討し、規範的指標としてのニーズ理論の普遍化可能性および「品位ある社会」の具体的構想を考察した。特に本研究の要である「ニードとしての帰属」に関しては、近代国家の編成およびロマン主義思想の台頭という歴史的視点なしには評価困難との認識で多くの論者が一致しており、政治理論への歴史的・道徳的視点の導入という本研究の基本的構想の妥当性が検証された。 3.オックスフォード大学所蔵のSir Isaiah Berlin Papers(編集中)が文献調査可能な水準に達したことを受け、2004年2月に渡英し、同図書館にて調査を行った。その結果、彼の近代思想史研究の視点と、現代英米哲学および倫理学の進展経過との並行関係を把握するに至った。これにより彼の思想史研究をその政治理論の一部として研究対象に組み込む視点が獲得された。 これらの知見をもとに、日本イギリス哲学会第28回研究大会(2004年3月)にて研究成果の一部を報告した。本報告は、これまで政治理論の分野で比較的無視されてきたバーリンの思想史研究が彼の政治理論の重要な部分として読解可能であるとの仮説の下、ロマン主義とナショナリズムの問題構制がニーズ論の文化的側面の考察に際してもつ意義を検討したものである。本報告に寄せられた意見をもとに論旨を再検討し、平成16年度に論文として公表する予定である。
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