2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J00981
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
三田 剛史 早稲田大学, 政治経済学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 経済思想史 / 日中交流史 / 日中近現代史 |
Research Abstract |
本年度前半は、日本国内に於いて研究テーマにかかわる先行研究の収集と整理を進め、2003年8月より北京に研究の場を移して、史料収集及び現地研究者との交流に取り組み始めた。2003年度の主たる成果は、1922年9月から1925年11月まで上海で合計28号発行さた雑誌『孤軍』をほぼ全号閲覧し、中国経済に対する現状認識と中国における社会主義革命の実行可能性を巡る当時の議論を分析したことである。1921年頃行われた中国社会主義論戦、1930年頃から行われた中国社会性質論戦・中国杜会史論戦の狭間の時期に刊行された『孤軍』における論争は、管見の限り先行研究においてほとんど注目されていないと考えられる。 『孤軍』の主たる論客は、在学者を含む日本留学経験のある青年知識人であり、特に京都帝国大学留学者が中心となった。殖民地・半殖民地状態におかれている中国でも世界革命の一翼を担う社会主義革命が可能であるという主張がなされる一方、中国の生産力は未発展であるためまず資本主義的杜会組織を採用すべきであるという主張もあった。また、中国社会に関する「半殖民地半封建」論の萌芽的議論も提出された。討論の過程で、コミンテルンとその傘下にある中国共産党の政策・方針は必ずしも受け容れられず、日本留学で得たマルクス主義の知識を適用し、社会主義革命は時期尚早とする主張が大勢を占めていった。しかし、『孤軍』の論者は、社会主義やマルクス主義を否定し去ったのではなく、むしろそれらを消化して現状分析に基づく社会主義への中国独特の道を模索していたといえる。 『孤軍』の研究に関しては、2004年5月に開催される杜会経済史学会全国大会の自由論題報告で発表を行う。
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