2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J01007
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
蔦尾 和宏 早稲田大学, 教育学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 今鏡 / 寂超 / 歌徳説話 / 打聞 / 鶯 / 時鳥 |
Research Abstract |
今年度は『今鏡』を中心に研究に従事し、「昔語」「打聞」二巻の分析を行った。『今鏡』は語り手が『大鏡』の語り手・大宅世継の孫に設定されるように、『大鏡』の衣鉢を継ぐ存在と自己規定し、その体裁に倣って構成されている。「昔語」は『大鏡』の「雑々物語」に相当する部分であるが、明確な章立てと精緻な説話配列を誇り、雑纂的と評される「雑々物語」とはかなり趣を異にする。従来、『今鏡』研究において、帝紀および、特に摂関列伝は作品構造との有機的関係が問われてきたが、その外部に存在する「昔語」は、個々の説話の考証には優れた研究を数えるが、その全体を論じたものは殆ど存在しない。紀伝体という叙述形式から見れば外縁に置かれた巻ではあるが、しかし、全体と無関係にそこに存在するのではないため、「昔語」の作品内における定義付け、「今鏡』の全体構造との関係性、内部の構成などを考察、帝紀・列伝との相関も視野に一論を成した。「打聞」は和歌説話を集成する「敷島の打聞」と、万葉集成立論「奈良の御代」、源氏物語論「作り物語の行方」から成るが、従来、前一者は前巻「昔語」が収める諸芸能譚の一翼を占める、云わば、「昔語」の延長線上に位置し、雑事として歴史叙述の一端に属するのに対し、後二者は歴史叙述とは関わりを持たない付属物と見なされ、巻の中間に内容的な区分が引かれてきた。しかし、同じ一巻に収まる以上、「敷島の打聞」「奈良の御代」「作り物語の行方」を統一的に捉える視点があり得るものと考えられ、「打聞」の統一的視点の模索を行い、結論を得た。また、『今鏡』の作者として確実視される寂超の周辺と「敷島の打聞」の編纂が密接に関わり、それ故に「敷島の打聞」には、それ以前の巻々には見られない叙述傾向が生じたことを論じた。
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Research Products
(2 results)