2004 Fiscal Year Annual Research Report
寺社縁起類を中心とする霊地ネットワークの形成・展開をめぐる研究
Project/Area Number |
03J01011
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
藤巻 和宏 早稲田大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 寺社縁起 / 流記 / 長谷寺 / 東大寺 / 真言密教 / 南都系縁起説 |
Research Abstract |
巡礼記研究会・第1回例会(2004.8)にて「『建久御巡礼記』長谷寺条の位相」と題し、また、説話文学会・仏教文学会・平成16年度合同例会(シンポジウム「寺社縁起」)にて、「縁起と流記をめぐる覚書-長谷寺流記の検討を起点として-」と題し、それぞれ口頭発表を行った。南都系縁起説の重要性を論じた前者は『巡礼記研究』(2004.12)に「南都系長谷寺縁起説の展開-『建久御巡礼記』、『諸寺建立次第』、護国寺本『諸寺縁起集』の検討から-」として掲載され、縁起・流記の概念を再検討した後者は『説話文学研究』40(2005.7)に掲載が決定している。 『古典遺産』54(2004.9)では「『長谷寺密奏記』の諸本と注記」として、今までの研究で重視してきたテクスト『長谷寺密奏記』について、その諸本の概略を述べるとともに、注記を検討することにより享受圏についても考察した。『伝承文学研究』54(2004.12)では、「東大寺四聖本地説の成立」と題し、東大寺四聖本地説が東大寺の真言教学の勃興・展開の中で成立してゆく様相を論じた。 以下は未刊行であるが、すでに掲載が決定しているものである。『寺社縁起の文化学』(森話社)に「組織と縁起-平安・鎌倉期の真言密教における縁起言説-」という論文を寄稿したが、これは、"縁起"概念を再検討するため縁起的言説を分析したものである。前年度から継続している随心院調査では報告書『随心院聖教と寺院ネットワーク』2が刊行されるが、そこに「近世の空海遺告注釈書・随心院蔵『御遺告秘釈』について」として、江戸期にそれまでの遺告注釈をめぐる諸説を集成した書を翻刻・紹介することになっている。また、神戸大学の『国文論叢』では「長谷寺研究」の特集が組まれ、そこに依頼を受け、「『長谷寺験記』の成立年代と「行仁上人記」」と題する論文を寄稿した。これは、長谷寺縁起類を論ずる際に逸することのできない『長谷寺験記』の成立年代をめぐる新説を提示するものである。 このほか、随心院をはじめとして各地の文庫・図書館等で長谷寺・東大寺・真言密教・寺社縁起関係の資料を蒐集・整理し、かつ、データベース化の作業を進めている。
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