2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J01018
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
横溝 博 早稲田大学, 教育学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | いはでしのぶ / 中世王朝物語 / 歌ことば / 皇統 / 摂関家 / 新古今 / 文体 / 表現 |
Research Abstract |
当該年度においては、『いはでしのぶ』の皇統と摂関家の両面の性質を明らかにするという目標に対して、基礎的な整理をなすための準備期間としてあり、必要な専門書の整備から始まり、『いはでしのぶ』の再検討をさまざまな角度から行った。その結果、この物語の院政期的側面はいよいよ濃厚となった感をもったが、かかる物語構造を明確に指摘するための前段階として、まずは物語の表現について、主として新古今時代の歌ことばを用いている例を抽出、分析することで、あらためて表現構造(主として文体)における中世王朝物語としての特質を明らかにし、その成果の一部を研究雑誌(後掲)に発表した。この考察によって、『いはでしのぶ』が新古今時代の歌ことばを多種多様に引用していることが明らかとなったのであり、そうしたいわば<当代性>なるものへの意識が強いことをもって、この作品を平安の物語から明らかに画すことができると考えた。そうした表現世界において強く意識されているのが、主として俊成・定家などの御子左家の歌人たちであることも、本考察により浮き彫りとなった。次回はそうした当代和歌の影響という点について、さらに追求する予定である。また、皇統ということでいえば、歴史上の白河院を髣髴とさせるような、『いはでしのぶ』の白河院の、作中における機能について、次代の嵯峨帝との関わりにおいて、明確にするべき観点を得ることができた。いわば「治天の君」という性格についてであるが、それについては具体的には、本年度の準備を踏まえて論文化し、次年度に発表したいと考えている。また、歴史上の摂関家の家格形成と機能の変化が、中世王朝物語にどのように反映しているか(いないのか)ということについて、全般的な整理作業を継続中である。なお、物語の舞台でもある白河については、法勝寺を中心とした白河地区の実地踏査により確認し、今後の考察のために大いに参考となった。
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