2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J01018
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
横溝 博 早稲田大学, 教育学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | いはでしのぶ / 中世王朝物語 / 歌ことば / 皇統 / 摂関家 / 新古今時代 / 文体 / 表現 |
Research Abstract |
今年度においては、中世王朝物語の表現や、その物語史的な位相について、『いはでしのぶ』『木幡の時雨』『海人の刈藻』『住吉物語』さらには室町時代物語といったように、院政期以降の物語を広く対象とした研究となった。 まず、『いはでしのぶ』については、それが内包する新古今時代の表現の質を問うて、前年度に示した成果をもとに、特異な歌ことばが文学作品に形成され、『いはでしのぶ』に取り入れられていく過程を、『源氏物語』『今とりかへばや』『有明の別れ』といった作品をも引きながら具体的にたどってみた。これは『いはでしのぶ』の被影響作である『恋路ゆかしき大将』『風に紅葉』へと繋がる問題として、さらに発展できる問題である。 また、中世王朝物語の研究としては、物語文学史の終焉として問題にされる室町期の擬古物語について、『木幡の時雨』の考察を主題にして考察した。具体的には、『海人の刈藻』の改作の問題と影響関係を見据えることを中心として、それを室町時代における『住吉物語』の広範な受容という観点から、変型継子物語としての相通ずる相貌を浮かび上がらせてみた。『住吉物語』じたい改作の問題を含んでおり、院政期成立の『海人の刈藻』が南北朝期に改作され、それが『木幡の時雨』の成立に関わっていることが事実であれば、擬古物語からお伽草子へという流れを具体的に考える上で、きわめて興味深い徴証である。物語文学の終息期を考察するための視点として、今後さらに発展させたいと考える。 このように、院政期から下っては室町期までの物語の表現を詳しく見ていくことで、個々の物語の特質は明確になるものと思われる。上記の研究成果の一方、目下準備を進めている『いはでしのぶ』内部の世界構造、そして新古今時代の物語としての表現の特質についての考察をまとめており、それらについては個別的かつ総合的な形で、次年度に公表する予定である。
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