2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J01018
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
横溝 博 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | いはでしのぶ / 中世王朝物語 / 歌ことば / 住吉物語 / 山路の露 / 表現 / 文体 / 源氏物語 |
Research Abstract |
今年度においては、昨年に引き続いて『いはでしのぶ』を中心とした中世王朝物語の成立や表現生成について、鎌倉前期成立と思われる『山路の露』や、室町期に下るであろう『住吉物語』広本系の諸本を対象とした研究を行い、主として『源氏物語』摂取の様相を明らかにした。 『山路の露』においては、特に作中和歌に着目し、これが『正治初度百首』に依拠していること、また『源氏物語』巻名和歌などの題詠歌や続歌と通底する発想や表現が見受けられることなど、作品の成立においては詠歌からの発想が物語の構想とは別に(あるいは先行して)存在していた可能性を指摘した。これは鎌倉期の物語の和歌や、物語の成立について考える上で有益な視点をもたらすものである。これについては名古屋大学「物語と散逸物語-『源氏物語』とその局辺」(2005年12月24日)のシンポジウムにおいて発表した。 『住吉物語』においては、特に広本系諸本に固有の場面に着目し、中でも『源氏物語』東屋巻との影響関係が想定される段について、『源氏物語』からの摂取という、通例とは逆の方向において検討した。その際、物語テクストを交錯させるものとして物語絵の介在の可能性について示唆した。『住吉物語』の多用な諸本群や中世における広範な受容相を探るとき、必ずしも『住吉物語』そのものに依拠しない、外在的な要因があるはずで、そのことを明らかにしようとするとき、広本は格好の材料である。こうしたことについて、国文学研究資料館「平安文学における場面生成研究」(2005年12月1日)において発表した。なお同『物語の生成と受容』に掲載予定である。 すでに調査・研究が完了している『いはでしのぶ』にまずは先行するかたちでの上記発表となった。物語の表現を、従来とは異なる方向において掘り下げていくことで、あらたな展開相が発見されてくる。とりわけ『山路の露』については、『いはでしのぶ』の和歌を考察するための補強材料として、当該研究に有機的に結びついてくるものである。
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