Research Abstract |
1.空間グラフの局所変形と,代数的不変量による分類の研究 空間グラフのΔ辺ホモトピー及びΔ頂点ホモトピー分類の研究は,空間グラフの持つ,より本質的な情報を調べるうえで大変重要である.本年度は、空間Θ曲線のΔ辺ホモトピー類が,付随する2成分絡み目の佐藤-Levine不変量によって完全に分類されることを示した.これは空間グラフのコボルディズムや概自明空間グラフとも関わる重要な成果である.更に空間4頂点完全グラフのΔ頂点ホモトピー分類は,辺ホモトピー分類と一致し、α不変量によって完全に分類されるのだが,これが,付随する3成分絡み目のMilnor不変量による分類という解釈を持つこともわかった. 一方,空間グラフの#辺ホモトピーという同値関係を新たに導入し,既知の同値関係との関わりを含めて,成果を挙げつつある.空間Θ曲線及び空間4頂点完全グラブの#辺ホモトピー類が,辺ホモトピー類,及び付随する2成分絡み自の佐藤-Levine不変量の偶奇によって完全に分類されることを示すとともに,全て互いに#辺ホモトピックであるが,Δ辺(頂点)ホモトピックではない空間グラフの無限族の例を構成した. 2.曲面を用いた空間グラフの研究 本年度は,空間グラフに含まれている結び目たちに,それぞれ同時にSeifert曲面を張ることによって,空間グラフの幾何学的な性質を調べるという研究に着手した.まず新庄玲子氏との共同研究によって,境界絡み目を空間グラフに拡張した.グラフの境界空間埋め込みという概念を導入し,グラフがいつ境界空間埋め込みを持つかどうかを完全に特徴付けた.更に境界空間グラフの自己パス変形による分類は,含まれている結び目のArf不変量によって決まること,及び自己#変形では常に自明となることも示した. 一方,堤幸博氏との共同研究では,特に空間グラフ内の自明な結び目たちに同時に円板を張ることを考え,nパネル的空間グラフの概念を導入し,それを用いて,グラフのn平坦性という,有限グラフ全体へのフィルター付けを新たに導入した.これは,空間グラフの絡み目内蔵性の問題を解決するために,Bohme, Robertson, Seymour, Thomasらによって導入され研究された.パネル的空間グラフ及び平坦グラフの一般化である.彼らは,平坦性に関する障害集合が絡み目内臓性に関する障害集合と一致することを示し,更にその元を全て決定したのだが,我々はn平坦性に関して,n=2の場合を除いて障害集合を全て決定し,更にn=2の場合に幾つかの元を見出した.
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