2003 Fiscal Year Annual Research Report
分子生物学的理論に基づいた新しい運動処方プログラムの開発
Project/Area Number |
03J01077
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
寺田 新 早稲田大学, 人間科学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 骨格筋代謝機能 / ミトコンドリア / 糖輸送体GLUT-4 / 身体運動トレーニング / 転写因子 / PGC-1α |
Research Abstract |
GLUT-4やミトコンドリアなどのタンパク質の合成は,DNAからmRNAを合成すること(転写)から始まる.転写には基本転写因子、mRNA合成酵素,転写因子および転写補助因子などが必要である.身体運動トレーニングによる骨格筋代謝機能の向上も,これらの運動が転写因子に影響を与えることにより引き起こされると考えられる。そこで,本年度は,まず,骨格筋の代謝機能を向上させる主な運動形態であるとこれまで考えられてきた持久的運動が核内の転写因子の発現量に及ぼす影響ついて検討した.その結果,一過性の持久的運動により転写補助因子PGC-1αの発現量が増加することが明らかとなった.最近になり,PGC-1αが寒冷暴露による褐色脂肪細胞のミトコンドリアおよびGLUT-4の増加の機序において重要な役割を果たしていることが明らかとなっている.したがって,本研究の結果から,運動による骨格筋ミトコンドリア・GLUT-4の増加もPGC-1αによって引き起こされているという可能性が考えられた.また,運動によるPGC-1αの増加は,運動に動員された筋群においてのみ特異的に増加することが明らかとなった.この結果は,PGC-1αの増加は体液性因子によるものではなく,筋収縮活動そのものの刺激によって引き起こされることを示すものであると考えられる.さらに,摘出骨格筋(m.epitrochlearis)をAMP依存性プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化剤であるAICARおよび細胞内Ca^<2+>濃度を増加させるCaffeineととも組織培養液中でインキュベーションしたところ,PGC-1αの発現量が有意に増加することが明らかとなった.したがって,これらの実験結果から,運動による骨格筋のミトコンドリアおよびGLUT-4の増加に,筋収縮活動による細胞内Ca^<2+>濃度の上昇およびAMPKの活性化による転写補助因子PGC-1αの増加という細胞内情報伝達経路が関与している可能性が示唆された.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Terada S, Muraoka I, Tabata I: "Changes in [Ca^<2+>]i induced by several glucose transport-enhancing stimuli in rat epitrochlearis muscle"Journal of Applied Physiology. 94(5). 1813-1820 (2003)
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[Publications] Terada S, Nakagawa S, Nakamura Y, Muraoka I: "Calcineurin is not involved in some mitochondrial enzyme adaptations to endurance exercise training in rat skeletal muscle"European Journal of Applied Physiology. 90(1-2). 210-217 (2003)
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[Publications] Terada S, Tabata I: "Effects of acute bouts of running and swimming exercise on PGC-1α protein expression in rat epitrochlearis and soleus muscle"American Journal of Physiology. 286(2). E208-E216 (2004)