2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J01078
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西岡 晋 早稲田大学, 政治経済学術院, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 福祉国家 / 社会保障 / 政策ネットワーク / 政策共同体 / イシュー・ネットワーク / 政策過程 / 政策変化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、福祉国家再編期における社会保障政策の展開過程について、政策ネットワーク論の視角から分析を行うことにある。研究対象国は日本とし、1990年代以後の医療・年金・社会福祉の各政策の展開過程の相違を分析した。その研究成果の一部はすでに、学術論文(「福祉国家再編のメゾ・レベル分析に向けて」)、共著書(「少子化社会とガバナンス」岩崎正洋編『ガバナンスの課題』所収)、研究報告(「比較福祉国家の中の医療政策」)として、順次発表してきた。 90年代以後の日本の社会保障政策の動向を概観すると、年金や医療分野などにおいては制度の抜本的改革は行われていない一方、社会福祉分野では基礎構造改革が進められている。政策領域ごとに異なる軌跡を捉えるには、政策セクターを対象としたメゾ・レベルの分析が必要である。そこで、メゾ・レベル分析において有用であると思われる政策ネットワーク論、その中でとくにローズ=マーシュ・モデルを主に参照して分析を進めた。 本研究から以下の知見が得られた。医療政策ネットワークおよび年金政策ネットワークにおいては、参加アクターが比較的少数でかつアクター間の関係が緊密な「政策共同体」が形成されているために、政策変化が起こりにくかった。ただし、両者を比較した場合、医療政策ネットワークにおいては日本医師会という強力な拒否権プレイヤーの存在ゆえに、年金政策に比べても変化する可能性がさらに低いという特性が見られた。他方、社会福祉政策ネットワークについては、多数のアクターが存在し、アクター間の関係も緊密ではない「イシュー・ネットワーク」の状態にあるため、介護保険制度の創設、育児支援制度の充実化、社会福祉基礎構造改革といった大きな政策変化が起きた。以上が本研究の結論である。
|
Research Products
(2 results)