2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J01110
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
永田 英理 早稲田大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 近世文学 / 芭蕉 / 俳諧 / 俳論 / 支考 / 七名八体 / 蕉風連句 / 付合手法 |
Research Abstract |
1.蕉風連句の研究方法の基盤を確立するため、連句の付合手法を体系化した支考の「七名八体」説をとりあげ、その内容の分析を行った。本年はそのなかから案じ方『三法」の「有心付(うしんづけ)」と「会釈(あしらひ)」の手法について、歌論・連歌論からの影響関係や、蕉門系伝書におけるその後の史的展開を検証し、以下のような結論を得た。 (1)「七名八体」説のなかで最も重視された「有心付」という手法は、従来から、蕉風連句の作風について論じるうえで欠かすことのできない、付様(つけよう)の按配を表す用語である「匂付(にほひづけ)」と同一視されてきた。しかし、支考の『俳諧十論』を詳細に分析すると、「有心付」とは、「心付(こころづけ)(意味付)」ともいうべき手法に近いものであることがわかる。またその案じ方については、本用語の淵源であるとみられる藤原定家の歌論『毎月抄』において説かれた「有心体」の理念を、強く受け継ぐものとしてとらえるべきであることを指摘した。これらについては、美濃派系伝書である『獅々門伝書』などにおける「有心付」の証例などからも実証することができる。 (2)先行研究である乾裕幸「「あしらひ」考」(『初期俳諧の展開』桜楓社、昭和43年)の成果をふまえ、蕉風俳論および蕉門系伝書における「会釈」の手法の史的展開を追った。その結果、支考以後の俳論史においては、一部にこの手法の転用がみられるものの、ほぼ一様に支考の定義した「会釈」の用法へと変わっていった事実を確認することができた。これは芭蕉以後、「物付」の手法が軽視されていったことを物語るものであるといえる。 2.芭蕉の発句における表現上の特質について、認知科学的な観点を取り入れながら分析した。その結果、芭蕉の言語センスには、「触覚」を介して五感すべてを統合する「体性感覚」の働きが密接にかかわっていることが判明した。(2003年10月俳文学会第55回全国大会にて口頭発表し、現在『国語と国文学』(東京大学)に投稿中)
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Research Products
(1 results)