2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J01111
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松本 和也 早稲田大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 日本史学 / キリシタン史学 / 認識 / イエズス会 / 権力者 / 国家 / 国王 |
Research Abstract |
本研究は、中近世移行期権力論をイエズス会宣教師の権力者認識という視点から取り組むことを目的とするものである。本年度は、そのうちガスパル・ヴィレラの畿内布教段階、すなわち戦国末期の畿内を対象とした。 分析に使用した史料は、主として従来より用いられているエヴォラ版日本書翰集であるが、本研究ではさらに他の諸写本を用い、エヴォラ版日本書翰集と校合を行うことで史料間の文言の異同を確認した。それから、権力者関連記事を抽出・分析し、宣教師の認識する日本の権力者像を読みとった。畿内布教が開始されると、宣教師はそれまでの大名情報の他に天皇・将軍情報も伝達するようになる。しかし、大名に対してすでに「国王」と表記していたことから、天皇と将軍をどう伝達するかが問題となった。そこで、宣教師は「日本全国の国王」とすることで大名と区別をしたり、「国王」である大名の「統括者」、もしくは「皇帝」と表記をしたりすることで差別化を図った。 こうした表記上の問題が生じたのは、宣教師が当該期の日本を大名領国と日本全国の二種類の枠組みで理解していたことによる。実質支配という点では大名領国が一つの国家として成立しているが、名目的にせよそれを統括する天皇・将軍がおり、その点で言えば日本は統一国家であると見ていたのである。これは、宣教師が天皇と将軍がいる京都で布教を開始することによって認識したことから、京都布教を契機に宣教師は実質支配と名目的権威という両側面から日本の権力者を捉えるようになったといえる。また、このような複雑で西洋の枠組みに当てはめにくい日本の国家形態を説明するのに、現地語である日本語(ローマ字表記)を用いるようにもなっていく。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 松本和也: "一五六九年六月一日付ルイス・フロイス普翰の日本語表記について"ヒストリア. 189号. (2004)
-
[Publications] 松本和也: "畿内布教と権力者・国家理解"キリスト教史学. 第58集. (2004)
-
[Publications] 松本和也: "永禄四・五年の畿内合戦とイエズス会の畿内布教"研究キリシタン学. 6号. 32-53 (2003)