2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J01111
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松本 和也 早稲田大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | イエズス会 / キリシタン / 権力 / 戦国 / 織豊 / 宣教師 / 国王 |
Research Abstract |
本研究課題は、中近世移行期権力論をイエズス会宣教師の権力者認識という視点から解明することを目的とするものである。本年度は、近世成立期と位置づけられる織豊政権期の国家・権力について検討した。この時期の宣教師史料は、原文書からの翻刻・翻訳がなされていないため、まず最初に原文書や古写本の翻刻・翻訳と、従来より用いられているエヴォラ版日本書翰集との校合を行った。この作業からキリシタン史の歴史事項を確認および訂正した上で織豊期の宣教師の権力者像を解明した。 宣教師は戦国大名を「国王(rei)」と評価していたが、近世大名に対しても同じ語句reiが用いられていることから、大名を「国王」とする理解は中世・近世通じて一貫していたといえる。また、大名を支配する天皇と足利将軍も日本全国の「国王」と宣教師が理解していることから、当時の日本は大名領国からなる小国家を天皇と将軍が統括している国家であるとの認識をもっていたことが分かる。織豊期に至ると、「天下」という語句に宣教師は注目し、織豊期権力・徳川権力を「天下の君主」と位置づけた。しかも戦国期では日本全国の「国王」である天皇や将軍には「名誉のみの国王」と評価していたのに対し、織豊期権力は実体を伴った「日本国王」と評価した。これによって、日本全体を支配する日本国王は織豊政権の成立に伴い新たな画期を迎えたといえる。 以上の宣教師の理解から、中近世移行期の国家構造は戦国から近世に移行する過程で連続性が認められるが、その上部構造は「天下の君主」の誕生によって近世への萌芽を見ることができるのである。その点から当該期の権力構造は重層的な国家の枠組みで捉えていく必要がある。
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Research Products
(1 results)