2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J01133
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
木村 元 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 力学的半群 / 密度作用素 / 正値作用素 / 正写像 / 量子相関 / 完全正値性 / 分解可能性 / 有限準位系 |
Research Abstract |
本研究では、発達段階にある量子開放系における状態と力学に関する基礎的研究を行い、数学的厳密性を保持した集合論的なアプローチによって,状態と力学(特に力学的半群)の空間の構造を探ってきた。現在までに力学の土台を成す状態空間の構造に関する幾つかの知見を得ている: [1]状態の密度作用素による表現では、作用素の正値性が重要な性質となるが、それを扱うことは困難である。本研究では解析的に扱うことのできるノルムによる正値作用素の特徴付けを構築するのに成功した(論文投稿準備中)。これは任意の有限準位系に適用され、たった一つの条件によって解析的に正値性を特徴づける。状態決定などの問題に実用的な方法を提供することになろう。 [2]量子論では合成系の相関に関して興味深い性質が知られている。それは「部分系が純粋状態にあるならば、系はどの環境とも相関を持たない」というものである。本来相関は、両系の情報を持って初めて測定される量であるが、部分系が純粋にあるという局所的情報が相関の全てを決定する、という驚くべき事実である。本研究では全体系が純粋状態にある制限下で、この定理を拡張することに成功した(論文投稿準備中):部分系が混合状態に在る場合でも、相関について得られる情報をその上限と下眼に渡って解析的に評価した。興味深いことに、部分系が2準位系の場合、部分系が混合状態にある場合でも、局所的測定から相関の情報を完全に得られることがわかった。 [3]その他、昨今注目を集めるエンタングルメント状態に関して、有名なPPTクライテリオンが全体系が純粋である場合には必要十分条件になることを証明した。 今後は、これらの状態に関する知見に基づき、力学への応用をメインに研究を進める。
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