2005 Fiscal Year Annual Research Report
スピンエントロピー逆流機構によるN型酸化物熱電変換材料の設計と合成
Project/Area Number |
03J01196
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小林 航 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | コバルト酸化物 / 強磁性 / スピンエントロピー / マグノンドラッグ |
Research Abstract |
本申請研究の平成17年度(最終年度)の研究目的は,(1)昨年度作製したペロブスカイト型コバルト酸化物の高温物性(電気抵抗,熱起電力,ホール係数)を測定し,測定されるコバルト系とマンガン系の高温物性の相違からスピンエントロピー逆流機構が生じるための必要条件を明らかにすること,さらに(2)このコバルト酸化物の室温強磁性における置換効果を調べ,その特異な強磁性状態とその強磁性状態における熱起電力の増大の起源を探ることであった。 平成17年度は,(1)の目的を達成するためにSr_<1-x>Y_xCoO_<3-d>の電気抵抗率,熱起電力,ホール係数,磁化率を800Kまで測定し,この物質が550K以上で中間スピンまたは高スピン状態のCo^<3+>が伝導する金属状態を示すことを見出した。この高温における熱起電力は数μV/Kと小さく,スピンエントロピー逆流機構では説明できない。この結果をMn系の測定結果と比較するとスピンエントロピーの逆流が生じるためには,電子が波動状態である金属ではなく粒子と見える状況設定が必要であることがわかった。 また(2)の目的を達成するためにSr_<0.75>Y_<0.25>Co_<1-x>Mn_xO_<3-d>,Sr_<0.75-x>Ca_xY_<0.25>CoO_<3-d>の焼結体試料を作製し,電気抵抗率,熱起電力を800Kまで磁化率を400Kまで測定した。測定の結果,わずか1%のMn置換によって50%の磁化が減少し,10%の置換で強磁性が完全に消失することを見出した。この結果は通常の希釈効果では説明できず,この強磁性がハイゼンベルクモデルでは説明できないことが明らかになった。またCa置換を行うと,置換量の増加とともに電気抵抗率は変化しないにも関わらず,熱起電力は100K付近で約4倍に増大することを見出した。この増大はキャリア濃度の変化では説明できず,有効質量の増大が示唆される。この熱起電力の増大はマグノンドラッグ効果によると考えられる。
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Research Products
(4 results)