2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J01222
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
高遠 拓児 中央大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中国史 / 清代 / 法制史 / 刑罰 |
Research Abstract |
上記の研究課題に関わる、2003年度中の研究実績として、本研究代表者は2本の研究論文の発表と、1件の口頭による研究報告を行った。 まず、論文「清代の刑部と秋審文書」(裏面11参照)では、本年度の主要な研究課題として掲げていた、清朝中央の司法機関である「刑部」の組織と機能について検討した。本論文では、従来ほとんど利用される機会のなかった、多数の刑部文書を整理するとともに、清代後期における刑部の意志決定プロセスの詳細なども明らかにすることができた。 また、論文「清末福建における監獄と押所」(裏面11参照)と、口頭報告「『柏垣瑣志』の世界-清末地方司法と署理按察使継昌-」(白東史学会大会、2003年11月29日)は、清代後期の刑罰制度の運用状況について、いずれも各地方段階での問題に焦点を絞って考察したものである。まず前者の論文では、刑罰制度の円滑な運用の前提となる「罪人の身柄の管理」の様子について、中国南部の福建省を一例として取り上げて検討した。ここでは、19世紀後半の清朝と太平天国の抗争以後の、同省での獄政の再編の過程について明らかにすることができた。また、後者の口頭報告では、清末の1901-1903年にかけて、中国中部の湖北省と湖南省で按察使(一省の司法を掌る官)の職務代行をつとめた継昌という人物の残した記録『柏垣瑣志』を通じて、清朝滅亡前夜の地方司法の運用状況について描き出し、当時の司法制度が抱えていた課題とその背景についての分析を行った。 このように2003年度中には、清代後期の中央の司法機関の組織や機構を明らかにするという所期の目標を達成するとともに、同時期の各地方における刑罰制度の運用状況についても、一歩、踏み込んだ研究成果を上げることができたことを、ここに報告するものである。
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Research Products
(2 results)