2003 Fiscal Year Annual Research Report
DNAポリメラーゼ阻害物質の化学的研究とその作用機構の解明
Project/Area Number |
03J01275
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
紙透 伸治 東京理科大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | DNAポリメラーゼα / 酵素阻害剤 / デヒドロアルテヌシン / 全合成 / 互変異性体 |
Research Abstract |
デヒドロアルテヌシンはDNAポリメラーゼ(pol)αのみを選択的に阻害し、その他のpolβ、δ、εなどは阻害しない。このため、この化合物はpolαの機能を詳細に調べるための鍵物質となることが期待されている。また、本物質は、ヒト胃がん細胞の増殖を抑制することから、抗がん剤としても期待されている。しかしながら、天然資源から得られるデヒドロアルテヌシンの量は少なく、これらの研究には不十分である。さらにこの化合物の全合成は未だ報告がない。そこでデヒドロアルテヌシンを全合成することにした。市販のトリヒドロキシベンゾイックアシッドから3工程で目的とするアリールトリフラートを合成した。このアリールトリフラートとアリールボロン酸あるいはアリールボロン酸エステルとを鈴木カップリングさせ、脱保護、酸化を経て、デヒドロアルテヌシンを合成した。以上のように、市販のトリヒドロキシベンゾイックアシッドから、鈴木カップリングを鍵反応として、7工程23%、あるいは6工程21%でデヒドロアルテヌシンの全合成を達成した。 デヒドロアルテヌシンは、X線結晶解析によりδラクトン環を有する構造であることがRogersらによって既に報告されている。本研究で、極性溶媒(ジメチルスルホキシド、メタノール、水)中では、γラクトン環を有する互変異性体との平衡状態であることを明らかにした。デヒドロアルテヌシンをジクロロメタン中、塩化アセチルーピリジンと反応させると、γ、δラクトン環を有するジアセチル体がそれぞれ約2:1で得られた。これら二つのアセチル体はpolα阻害活性を示さなかった。さらにデヒドロアルテヌシンの誘導体を合成し、そのDNAポリメラーゼ阻害活性を測定することにより、構造活性相関を調べている。これを基に、デヒドロアルテヌシンのビオチン化などを行い、polαの詳細な機能を調べるための分子プローブとして利用する予定である。
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